2013年08月30日
第15回 秋上がりの季節
白玉の 歯にしみとおる秋の夜の
酒は静かに飲むべかりける (若山牧水)

この夏の厳しい暑さもようやくひと段落つきそうですね。若山牧水のような粋人も、私のように一年を酒の呑み頃でカウントしているような卑しい酒徒も、9月、秋の声を聞くと、「秋上がり」という言葉に心ときめきます。ご存知でしょうか、日本酒の専門用語で、冬から春にかけて仕込んだ酒を、しばらく蔵で熟成させ、ひと夏を越し、涼しくなる秋口になると、美味しさが増してくる、という意味です。この「秋上がり」の酒を、涼しくなったら蔵から出荷することを「冷やおろし」と言います。美しい言葉でしょう。
吉田元氏の『江戸の酒~その技術・経済・文化』(朝日選書)によると、日本酒は16世紀半ばの室町後期~戦国時代の頃、玄米→精白米を使うという劇的な技術革新が行われ、江戸初期の記録では、旧暦八月に前年の古米で造る酒を「新酒」とし、「間酒」「寒前酒」「寒酒」「春酒」と真夏を除くオールシーズン、酒を造っていたようです。
アルコール発酵をつかさどる麹菌や酵母菌は、一般の雑菌同様、高温の状態で活動が活発になるので、夏場のほうが酒は短期間で出来るのですが、当然ながら有害な雑菌も多く、腐造のリスクも高い。気温の低い寒中の酒造りは、微生物の働きがにぶくなるため、時間はかかるが雑菌侵入の心配が少なく、良質の酒に仕上がる。酒造業を統制する幕府側も、年がら年中、勝手に自家醸造されるより、秋口に収穫した新米で良質な寒造りをさせることで課税管理しやすくなる、というわけで、次第に寒期に集中醸造するようになりました。
精白米と寒造りによって酒質は大きく向上したものの、今のように原料米を機械で6割も5割も磨けるわけではありません。臼や杵に頼っていた江戸初期の精米は今の吟醸酒とは比較にならないレベル。酒屋で販売する等級は、全量精白米で造った酒を「諸白」、麹米だけ精白した酒を「片白」、従来の濁り酒を「並酒」と区分けされていました。
これらの酒は、現代人からすれば、さぞかし荒っぽく雑な味だったろうと想像しちゃいますが、昔の米は今で言う有機自然農法で、土の養分をたっぷり含み、軟らかく、もろみに融けやすく、米の味がしっかり酒に反映されていたことでしょう。ちゃんと火入れをし、涼しい土蔵の中でひと夏貯蔵しておくと、搾りたての頃とはまた違う、アルコール熟成の妙が加味されたんだと思います。これは、日本の酒、日本の食の美味しさの、まさに本質ではないでしょうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
高精白米を使用し、冷蔵貯蔵完備できるようになり、昔の酒ほど熟成の変化が顕在化しづらくなったとはいえ、実りの季節の酒は、「秋上がり」の名にふさわしく、秋晴れの爽快な空と豊穣な地をイメージさせてくれます。
この時期、各地では地酒の試飲イベントが目白押しとなります。私が現時点で把握しているイベントを紹介しましょう。
【 藤枝DE はしご酒 】
参加店で蔵元が直接接待&地酒指南をする地酒ファン垂涎のはしご酒イベント。参加費は1店につき1000円(地酒一杯&特選酒肴付き)。
◇ 日 時 9月1日(日)15時~20時(入店)
◇ 参加店(4店) かわかつ(藤枝市駅前1-8-5)/ダイドコバル(藤枝市田沼1-3-26)/八っすんば(藤枝市駅前1-6-20)/藤枝市場(藤枝市駅前2-8-2)
◇ 参加蔵元 英君(静岡市清水区由比)/若竹(島田市)/喜久醉(藤枝市上青島)/杉錦(藤枝市小石川)
*どの蔵元がどの店に居るかは当日のお楽しみ。4店制覇すれば記念品贈呈。
▽イベントのパンフレットはこちら

【 静岡DE はしご酒 】
◇ 日 時 9月21日(土)17時30分~21時(入店)
◇ 参加店(8店) うず(静岡市葵区音羽町3-18)/おい川(静岡市葵区鷹匠1-4-1)/小だるま亭(静岡市葵区横田町2-6-7)/たがた(静岡市葵区常磐町2-6-7)/狸の穴(静岡市葵区両替町2-2-5)/のっち(静岡市葵区七間町8-25)/華音(静岡市葵区両替町2-5-8)/湧登(静岡市駿河区南町7-9)
◇ 参加蔵元 開運(掛川市)/金明(御殿場市)/君盃(静岡市駿河区手越)/國香(袋井市)/小夜衣(菊川市)/志太泉(藤枝市宮原)/初亀(藤枝市岡部)/富士錦(富士宮市芝川)
*どの蔵元がどの店に居るかは当日のお楽しみ。8店中4店制覇すれば記念品贈呈
【 蔵元を囲むしのだ日本酒の会 】
清水の地酒専門店・篠田酒店が取引先の蔵元を招いて最高レベルのラインナップを紹介。今年で39回を数える老舗イベントです。今年は清水の割烹・梅芳園の特選料理、盲目のギタリスト服部こうじ氏の生演奏が楽しめます。着席スタイル。
◇ 日 時 9月15日(日) 16時~18時20分
◇ 会 場 清水マリンビル7階ホール
◇ 料 金 8000円(前売り制)
◇ 問合せ 篠田酒店 TEL 054-352-5047
【 沼津日本酒フェス2013 】
沼津の地酒専門店・芹澤酒店が取引先の蔵元を招いて気軽に試飲を楽しんでもらう立ち飲みスタイルの地酒イベント。各蔵持参のつまみとREFS(無農薬野菜のセレクトショップ)厳選素材のつまみを用意。伊豆稲取の大久保農園さんの採れたて新鮮野菜の試食もあります。
◇ 日 時 9月22日(日) 14時~16時
◇ 会 場 キラメッセ沼津
◇ 料 金 2100円(前売り制・イープラスにて発売中)
◇ 問合せ 芹澤酒店 TEL 055-931-1514
◇ 参加蔵 28蔵
(県内) 白隠正宗(沼津市)/金明(御殿場市)/高砂(富士宮市)/英君(静岡市清水区由比)/正雪(出品のみ)/臥龍梅(静岡市清水区西久保)/杉錦(藤枝市小石川)/志太泉(藤枝市宮原)/若竹(島田市)/小夜衣(菊川市)/開運(掛川市)
(県外)陸奥八仙・天の戸(出品のみ)・阿部勘・奈良萬・若駒・麒麟山・神亀・羽根屋
加賀鳶/黒帯・十六代九郎右衛門・黒松仙醸・北光正宗・昇龍蓬莱・澤屋まつもと・睡龍・
梅乃宿・車坂・ヤマサン正宗・旭菊
【 酒のいわせ 日本酒試飲会 】
御殿場の地酒専門店・酒のいわせが取引先の蔵元を招いて気軽に試飲を楽しんでもらう立ち飲みスタイルの地酒イベント。「ふじやまプロシュート」で知られる渡辺ハム工房のおつまみブースもあります。
◇ 日 時 9月29日(日) 13時30分~15時30分
◇ 会 場 森の腰ショッピングセンター・エピ 2階大ホール
◇ 料 金 2500円(前売り制)
◇ 問合せ 酒のいわせ TEL 0550-82-2009
◇ 参加蔵 金明(御殿場市)/白隠正宗(沼津市)/初亀(藤枝市岡部)/喜久醉(藤枝市上青島)/相模灘(神奈川)/巖(群馬)/醴泉(岐阜)/黒龍(福井)/澤の花(長野)/紀土(和歌山)/美丈夫(高知)
【 第26回 静岡県地酒まつり in 静岡2013 】
毎年、静岡県の東・中・西部で巡回開催する静岡県酒造組合主催の地酒まつり。県下全蔵元が集結する県内最大の地酒イベントで、今年で26回目。立食形式でプレゼント抽選会もあります。
◇ 日 時 10月1日(火) 18時~20時
◇ 会 場 ホテルセンチュリー静岡
◇ 料 金 2000円(イープラスにて発売中)
◇ 問合せ 静岡県酒造組合 TEL 054-255-3082
*当日、全国利き酒選手権大会静岡県予選会を同時開催。誰でも挑戦できます。16時00分受付開始、17時20分受付終了。
上記のうち、『○○DEはしご酒』は、主宰する居酒屋「湧登」のご主人が、今、流行のおまちバルよりもずっと前に、地酒の造り手と飲み手を、売り手の店で引き合わせる仕掛けを考えて、お店のお客さんたちが有志で運営組織を作って始めた手作りイベントです。年々参加店や参加蔵が増え、静岡、清水、藤枝、沼津と開催地も広がっています。事前予約が要らず、時間内ならば、誰でも気軽に参加できるので、地酒が呑めるお店を開拓するには最適のイベントですね!
私が酒の修業をしていた25年ぐらい前は、静岡県地酒まつりや篠田酒店さんのイベントぐらいしかありませんでしたが、ここ数年、イベントの数はグッと増えました。地域の酒販店さんや飲食店さんが販促活動の枠を超え、手弁当で本当に頑張っているんです。今では店主よりもお客さんのほうが「今度はいつやる?」とせっつくような状況とか。
お店の常連さんばかりでは地酒ファンの底辺拡大は進みませんし、私がここで、いくら活字を駆使してあれこれ熱弁したところで、やっぱり造っている蔵元の顔を直接見て、直接呑んでもらわないことには、お酒の価値を実感していただくことはできません。
美酒との出会いの機会がグッと増える秋上がりの季節、この種のイベントに縁のなかったみなさまや、当ブログを訪問してくださったみなさまにも、どうか素敵な一杯との出会いがありますように!
酒は静かに飲むべかりける (若山牧水)

この夏の厳しい暑さもようやくひと段落つきそうですね。若山牧水のような粋人も、私のように一年を酒の呑み頃でカウントしているような卑しい酒徒も、9月、秋の声を聞くと、「秋上がり」という言葉に心ときめきます。ご存知でしょうか、日本酒の専門用語で、冬から春にかけて仕込んだ酒を、しばらく蔵で熟成させ、ひと夏を越し、涼しくなる秋口になると、美味しさが増してくる、という意味です。この「秋上がり」の酒を、涼しくなったら蔵から出荷することを「冷やおろし」と言います。美しい言葉でしょう。
吉田元氏の『江戸の酒~その技術・経済・文化』(朝日選書)によると、日本酒は16世紀半ばの室町後期~戦国時代の頃、玄米→精白米を使うという劇的な技術革新が行われ、江戸初期の記録では、旧暦八月に前年の古米で造る酒を「新酒」とし、「間酒」「寒前酒」「寒酒」「春酒」と真夏を除くオールシーズン、酒を造っていたようです。
アルコール発酵をつかさどる麹菌や酵母菌は、一般の雑菌同様、高温の状態で活動が活発になるので、夏場のほうが酒は短期間で出来るのですが、当然ながら有害な雑菌も多く、腐造のリスクも高い。気温の低い寒中の酒造りは、微生物の働きがにぶくなるため、時間はかかるが雑菌侵入の心配が少なく、良質の酒に仕上がる。酒造業を統制する幕府側も、年がら年中、勝手に自家醸造されるより、秋口に収穫した新米で良質な寒造りをさせることで課税管理しやすくなる、というわけで、次第に寒期に集中醸造するようになりました。
精白米と寒造りによって酒質は大きく向上したものの、今のように原料米を機械で6割も5割も磨けるわけではありません。臼や杵に頼っていた江戸初期の精米は今の吟醸酒とは比較にならないレベル。酒屋で販売する等級は、全量精白米で造った酒を「諸白」、麹米だけ精白した酒を「片白」、従来の濁り酒を「並酒」と区分けされていました。
これらの酒は、現代人からすれば、さぞかし荒っぽく雑な味だったろうと想像しちゃいますが、昔の米は今で言う有機自然農法で、土の養分をたっぷり含み、軟らかく、もろみに融けやすく、米の味がしっかり酒に反映されていたことでしょう。ちゃんと火入れをし、涼しい土蔵の中でひと夏貯蔵しておくと、搾りたての頃とはまた違う、アルコール熟成の妙が加味されたんだと思います。これは、日本の酒、日本の食の美味しさの、まさに本質ではないでしょうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
高精白米を使用し、冷蔵貯蔵完備できるようになり、昔の酒ほど熟成の変化が顕在化しづらくなったとはいえ、実りの季節の酒は、「秋上がり」の名にふさわしく、秋晴れの爽快な空と豊穣な地をイメージさせてくれます。
この時期、各地では地酒の試飲イベントが目白押しとなります。私が現時点で把握しているイベントを紹介しましょう。
【 藤枝DE はしご酒 】
参加店で蔵元が直接接待&地酒指南をする地酒ファン垂涎のはしご酒イベント。参加費は1店につき1000円(地酒一杯&特選酒肴付き)。
◇ 日 時 9月1日(日)15時~20時(入店)
◇ 参加店(4店) かわかつ(藤枝市駅前1-8-5)/ダイドコバル(藤枝市田沼1-3-26)/八っすんば(藤枝市駅前1-6-20)/藤枝市場(藤枝市駅前2-8-2)
◇ 参加蔵元 英君(静岡市清水区由比)/若竹(島田市)/喜久醉(藤枝市上青島)/杉錦(藤枝市小石川)
*どの蔵元がどの店に居るかは当日のお楽しみ。4店制覇すれば記念品贈呈。
▽イベントのパンフレットはこちら

【 静岡DE はしご酒 】
◇ 日 時 9月21日(土)17時30分~21時(入店)
◇ 参加店(8店) うず(静岡市葵区音羽町3-18)/おい川(静岡市葵区鷹匠1-4-1)/小だるま亭(静岡市葵区横田町2-6-7)/たがた(静岡市葵区常磐町2-6-7)/狸の穴(静岡市葵区両替町2-2-5)/のっち(静岡市葵区七間町8-25)/華音(静岡市葵区両替町2-5-8)/湧登(静岡市駿河区南町7-9)
◇ 参加蔵元 開運(掛川市)/金明(御殿場市)/君盃(静岡市駿河区手越)/國香(袋井市)/小夜衣(菊川市)/志太泉(藤枝市宮原)/初亀(藤枝市岡部)/富士錦(富士宮市芝川)
*どの蔵元がどの店に居るかは当日のお楽しみ。8店中4店制覇すれば記念品贈呈
【 蔵元を囲むしのだ日本酒の会 】
清水の地酒専門店・篠田酒店が取引先の蔵元を招いて最高レベルのラインナップを紹介。今年で39回を数える老舗イベントです。今年は清水の割烹・梅芳園の特選料理、盲目のギタリスト服部こうじ氏の生演奏が楽しめます。着席スタイル。
◇ 日 時 9月15日(日) 16時~18時20分
◇ 会 場 清水マリンビル7階ホール
◇ 料 金 8000円(前売り制)
◇ 問合せ 篠田酒店 TEL 054-352-5047
【 沼津日本酒フェス2013 】
沼津の地酒専門店・芹澤酒店が取引先の蔵元を招いて気軽に試飲を楽しんでもらう立ち飲みスタイルの地酒イベント。各蔵持参のつまみとREFS(無農薬野菜のセレクトショップ)厳選素材のつまみを用意。伊豆稲取の大久保農園さんの採れたて新鮮野菜の試食もあります。
◇ 日 時 9月22日(日) 14時~16時
◇ 会 場 キラメッセ沼津
◇ 料 金 2100円(前売り制・イープラスにて発売中)
◇ 問合せ 芹澤酒店 TEL 055-931-1514
◇ 参加蔵 28蔵
(県内) 白隠正宗(沼津市)/金明(御殿場市)/高砂(富士宮市)/英君(静岡市清水区由比)/正雪(出品のみ)/臥龍梅(静岡市清水区西久保)/杉錦(藤枝市小石川)/志太泉(藤枝市宮原)/若竹(島田市)/小夜衣(菊川市)/開運(掛川市)
(県外)陸奥八仙・天の戸(出品のみ)・阿部勘・奈良萬・若駒・麒麟山・神亀・羽根屋
加賀鳶/黒帯・十六代九郎右衛門・黒松仙醸・北光正宗・昇龍蓬莱・澤屋まつもと・睡龍・
梅乃宿・車坂・ヤマサン正宗・旭菊
【 酒のいわせ 日本酒試飲会 】
御殿場の地酒専門店・酒のいわせが取引先の蔵元を招いて気軽に試飲を楽しんでもらう立ち飲みスタイルの地酒イベント。「ふじやまプロシュート」で知られる渡辺ハム工房のおつまみブースもあります。
◇ 日 時 9月29日(日) 13時30分~15時30分
◇ 会 場 森の腰ショッピングセンター・エピ 2階大ホール
◇ 料 金 2500円(前売り制)
◇ 問合せ 酒のいわせ TEL 0550-82-2009
◇ 参加蔵 金明(御殿場市)/白隠正宗(沼津市)/初亀(藤枝市岡部)/喜久醉(藤枝市上青島)/相模灘(神奈川)/巖(群馬)/醴泉(岐阜)/黒龍(福井)/澤の花(長野)/紀土(和歌山)/美丈夫(高知)
【 第26回 静岡県地酒まつり in 静岡2013 】
毎年、静岡県の東・中・西部で巡回開催する静岡県酒造組合主催の地酒まつり。県下全蔵元が集結する県内最大の地酒イベントで、今年で26回目。立食形式でプレゼント抽選会もあります。
◇ 日 時 10月1日(火) 18時~20時
◇ 会 場 ホテルセンチュリー静岡
◇ 料 金 2000円(イープラスにて発売中)
◇ 問合せ 静岡県酒造組合 TEL 054-255-3082
*当日、全国利き酒選手権大会静岡県予選会を同時開催。誰でも挑戦できます。16時00分受付開始、17時20分受付終了。
上記のうち、『○○DEはしご酒』は、主宰する居酒屋「湧登」のご主人が、今、流行のおまちバルよりもずっと前に、地酒の造り手と飲み手を、売り手の店で引き合わせる仕掛けを考えて、お店のお客さんたちが有志で運営組織を作って始めた手作りイベントです。年々参加店や参加蔵が増え、静岡、清水、藤枝、沼津と開催地も広がっています。事前予約が要らず、時間内ならば、誰でも気軽に参加できるので、地酒が呑めるお店を開拓するには最適のイベントですね!
私が酒の修業をしていた25年ぐらい前は、静岡県地酒まつりや篠田酒店さんのイベントぐらいしかありませんでしたが、ここ数年、イベントの数はグッと増えました。地域の酒販店さんや飲食店さんが販促活動の枠を超え、手弁当で本当に頑張っているんです。今では店主よりもお客さんのほうが「今度はいつやる?」とせっつくような状況とか。
お店の常連さんばかりでは地酒ファンの底辺拡大は進みませんし、私がここで、いくら活字を駆使してあれこれ熱弁したところで、やっぱり造っている蔵元の顔を直接見て、直接呑んでもらわないことには、お酒の価値を実感していただくことはできません。
美酒との出会いの機会がグッと増える秋上がりの季節、この種のイベントに縁のなかったみなさまや、当ブログを訪問してくださったみなさまにも、どうか素敵な一杯との出会いがありますように!
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年08月16日
第14回 柳陰と日本酒カクテル
静岡弁で“やっきり”するほど暑い夏。人前では日本酒しか呑みません宣言をしている私も、外出先から帰ってくると冷蔵庫からまず取り出すのが冷え冷えの缶ビールになっちゃって、これじゃぁ日頃お世話になっている蔵元さんや酒屋さんに顔向けできないと忸怩たる思い・・・。できるだけこの時期、日本酒を消費する対策をあれこれ試している最中です。
先日、フェイスブックに「暑いから日本酒をソーダ水で割って飲んでいる」と書いたら、「そんな飲み方があるの!?」という驚きのコメントをもらいました。「自由にアレンジしていいんですよ♪」と返信しながら、自分もちょっと前まで、“蔵元さんが丹精込めて造った酒を、勝手に加工しちゃいけない”と思い込んでいたよなぁ・・・とセルフ突っ込みしてました(苦笑)。
実は、しずおか地酒研究会で2012年7月、藤枝市文化センターで【酒と匠の文化祭~夏版】というイベントを開いたとき、酒販店会員の後藤英和さんに、日本酒を使ったサマーカクテルをあれこれ考案してもらい、お客さんと一緒にテイスティングを楽しんだのです。
こちらがそのレシピ。合わせる量はお好みです。
●SAKE・ライム/ロックアイス+日本酒+ライムジュース
●SAKE・ロック/ロックアイス+どぶろく
●ドブ・ハイ/どぶろく+ソーダ
●SAKE・リッキー/日本酒+ライムジュース+ソーダ
●SAKE・トニック/日本酒+トニックウォーター
●SAKE・フィズ/日本酒+レモンジュース+サイダー
●SAKE・バック/日本酒+レモンジュース+ジンジャーエール
●SAKE・カルピス/日本酒+カルピス+ソーダ
●SAKE・オレンジ/日本酒+オレンジジュース
●SAKE・アップル/日本酒+アップルジュース
●SAKE・ピーチ/日本酒+モモの果肉(みじんぎり)
●SAKE・梅ハイ/日本酒+梅酒+ソーダまたはサイダー
●酒茶漬け/水洗いした冷や飯に好みの具(鮭・梅・塩から等)をのせ、キンキンに冷やした酒を注ぐ。
●酒しゃぶ/出汁のかわりに酒で肉・魚・野菜をしゃぶしゃぶする。沸騰させてアルコールを飛ばす。
冒頭の「SAKEライム」は、日本酒をライムで割ったカクテル「サムライ・ロック」でおなじみですね。外国人受けを狙ったネーミングなのかな。
いずれにしても、この後藤レシピのおかげで、気分や体調に合わせて氷やミネラルウォーターで割って飲むスタイルを自然に楽しめるようになりました。レシピの中では日本酒をレモンジュースとジンジャーエールで割った「SAKEバック」がお気に入り。爽快で飲みやすくて、これなら日本酒が苦手という女子たちにも薦められます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【酒と匠の文化祭】では、後藤さんのカクテル片手に、フリーアナウンサー國本良博さんに、酒の名文を朗読してもらうスペシャルステージを行いました。國本さんに読んでいただく文章をあれこれ探していたとき、目に留まったのが、篠田次郎氏の『日本酒ことば入門』(無明舎出版)。その中に、こんな一節があります。
8月の酒 柳陰
猛暑のシーズン、だれもが疲労回復の妙薬が欲しいと思うだろう。現代人なら健康ドリンクの小鬢の蓋を開けて、グイーっとやって、しばしスタミナが回復したと思うのであろうが・・・。それと同じ効果を、江戸の人たちもやっていた。
ビタミン剤とか疲労回復剤なんどが発明・発見される、はるか以前のことである。
私たちの体を活性させる一番の妙薬は、体を動かすエネルギーを補給することである。それは、枯渇した糖分を補給すればいいのだ。糖分でなく、デンプン質でもいいし、アルコール分なら、より効き目は早く来る。ウソと思うなら、お手元のドリンク剤の成分をよく読んでみてほしい。
ごはんのデンプンを、麹の力で糖化した『甘酒』は、江戸の人の夏の飲み物だった。甘酒売りから甘酒を買って飲む。そうすれば疲労感はすっ飛ぶのだ。
それに、少量のアルコールが入っていれば、効果は倍増する。「甘酒なんて女・子どもの飲み物だ」とおっしゃる飲んベイ、江戸っ子はそれなりの智恵を働かせた。
彼らは夏の真っ盛りの飲物に「柳」に「陰」と書いて「柳陰」というのを愛用した。それは、酒屋で売っているのではなく、自分で作ったのである。
作り方はいたって簡単。酒にみりんを加えるだけだ。みりんは主に調理に使われる甘さとうまみ材である。甘さがたっぷりはいったアルコール系飲料だから、エネルギー欠乏時の活性剤としてはまさにずばりの飲物である。
ウソだと思う人は、ドリンク剤の成分をもう一度お読みください。
文中に出てくる「柳陰(やなぎかげ)」という酒、気になりますよね。古典落語の『青菜』に登場する酒です。
「植木屋さん、こっち来て一杯やらんかいな。」
「へえ。旦那さん。おおきにありがとさんでございます。」
「一人で飲んでてもおもろあらへん。植木屋さん相手に一杯飲もうと用意してましたのじゃ。どや、あんた柳蔭飲まんか。」
「へっ! 旦那さん、もうし、柳蔭ちゅうたら上等の酒やおまへんか。いただいてよろしいんで?」
「遠慮せんでよろし。こうして冷やしてました。さあ、注いだげよ。」「こら、えらいありがたいことでおます。」
ってな感じの軽妙なやりとり。最初に聴いたとき、「柳陰」ってどこの蔵元のどんな高級酒かと思いましたが、調べてみたら、焼酎をみりんで割った“酒カクテル”だったんです。
確かに丁寧に醸造された本みりんは、ストレートでも飲める美味しさ。度数の高いアルコールとブレンドすれば、アルコール由来のつんつんとした辛さを甘くまろやかにコーティングしてくれるでしょう。オンザロックやソーダ水で割れば、度数が低くなり、グイグイ爽快に飲めます。
そこでさっそく、自宅で愛用している杉井酒造(藤枝市)が醸造する『飛鳥山』と、広島県福山市の『保命酒』を、(焼酎は買い置きしていないので)それぞれ日本酒に半量混ぜてロックにして飲んでみたら、篠田氏ご指摘のとおり、時々飲む栄養ドリンク剤からクスリ臭さや香料臭さを除去したような、自然の甘みがふんわり口中に広がり、ビックリするほど美味しかった。この時期の滋養強壮にピッタリだと実感しました。

杉井酒造の純米みりん「飛鳥山」、「杉錦」夏の純米吟醸、杉錦米焼酎「才助」
ちなみに、保命酒というのは、広島県福山市鞆の浦で江戸時代から造られている薬草酒。2007年静岡市製作の映画『朝鮮通信使~駿府発二十一世紀の使行録』の脚本を担当したとき、鞆の浦で見つけた通信使ゆかりの地酒です。幕末には、老中阿部正弘(福山藩主)が下田でペリー一行にこの酒を振舞ったという逸話も残っています。興味のある方はこちらのブログを参照してください。
http://mayumi-s-jizake.blogzine.jp/blog/2010/05/post_9428.html

保命酒は16種類の薬草を使った本みりん
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
体力が落ちているとき、人は甘いものを欲するといいます。以前、このコラムで鑑評会出品酒が甘い酒になっているのは、甘い=オイシイの代名詞になっているのでは?と指摘し、何でもかんでも甘味を第一評価するというのは、現代日本人が疲れている、あるいは味覚が原始化?しているのでは、と考えさせられました。自分も、日本酒に甘味や酸味を加えてアレンジしたくなるのは、やっぱりいつもの調子じゃないときだって自覚します。
日本酒は、夏を越し、涼しくなる秋口からグーンと旨味が増してくるといわれます。それは、熟成の妙だけでなく、受け止める人間の味覚も“本調子”に戻ってくるからじゃないでしょうか。
自分も、この暑さがひと段落したら、日本酒本来の香味バランスと繊細な渋味や辛さを美味しく感じられる状態に戻れるんじゃないか、と期待しつつ、それまでは江戸っ子の知恵や流儀を上手に取り入れ、汗をかきかき、今夜も冷蔵庫や調味料棚を物色しています。杉井酒造では、日本酒「杉錦」、焼酎「才助」、みりん「飛鳥山」が揃っているので、杉錦トリプルブレンドに挑戦してみようかな。
◆杉井酒造公式サイト
http://suginishiki.com/
◆「保命酒」醸造元 岡本亀太郎本店公式サイト
http://www.honke-houmeishu.com/
先日、フェイスブックに「暑いから日本酒をソーダ水で割って飲んでいる」と書いたら、「そんな飲み方があるの!?」という驚きのコメントをもらいました。「自由にアレンジしていいんですよ♪」と返信しながら、自分もちょっと前まで、“蔵元さんが丹精込めて造った酒を、勝手に加工しちゃいけない”と思い込んでいたよなぁ・・・とセルフ突っ込みしてました(苦笑)。
実は、しずおか地酒研究会で2012年7月、藤枝市文化センターで【酒と匠の文化祭~夏版】というイベントを開いたとき、酒販店会員の後藤英和さんに、日本酒を使ったサマーカクテルをあれこれ考案してもらい、お客さんと一緒にテイスティングを楽しんだのです。
こちらがそのレシピ。合わせる量はお好みです。
●SAKE・ライム/ロックアイス+日本酒+ライムジュース
●SAKE・ロック/ロックアイス+どぶろく
●ドブ・ハイ/どぶろく+ソーダ
●SAKE・リッキー/日本酒+ライムジュース+ソーダ
●SAKE・トニック/日本酒+トニックウォーター
●SAKE・フィズ/日本酒+レモンジュース+サイダー
●SAKE・バック/日本酒+レモンジュース+ジンジャーエール
●SAKE・カルピス/日本酒+カルピス+ソーダ
●SAKE・オレンジ/日本酒+オレンジジュース
●SAKE・アップル/日本酒+アップルジュース
●SAKE・ピーチ/日本酒+モモの果肉(みじんぎり)
●SAKE・梅ハイ/日本酒+梅酒+ソーダまたはサイダー
●酒茶漬け/水洗いした冷や飯に好みの具(鮭・梅・塩から等)をのせ、キンキンに冷やした酒を注ぐ。
●酒しゃぶ/出汁のかわりに酒で肉・魚・野菜をしゃぶしゃぶする。沸騰させてアルコールを飛ばす。
冒頭の「SAKEライム」は、日本酒をライムで割ったカクテル「サムライ・ロック」でおなじみですね。外国人受けを狙ったネーミングなのかな。
いずれにしても、この後藤レシピのおかげで、気分や体調に合わせて氷やミネラルウォーターで割って飲むスタイルを自然に楽しめるようになりました。レシピの中では日本酒をレモンジュースとジンジャーエールで割った「SAKEバック」がお気に入り。爽快で飲みやすくて、これなら日本酒が苦手という女子たちにも薦められます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【酒と匠の文化祭】では、後藤さんのカクテル片手に、フリーアナウンサー國本良博さんに、酒の名文を朗読してもらうスペシャルステージを行いました。國本さんに読んでいただく文章をあれこれ探していたとき、目に留まったのが、篠田次郎氏の『日本酒ことば入門』(無明舎出版)。その中に、こんな一節があります。
8月の酒 柳陰
猛暑のシーズン、だれもが疲労回復の妙薬が欲しいと思うだろう。現代人なら健康ドリンクの小鬢の蓋を開けて、グイーっとやって、しばしスタミナが回復したと思うのであろうが・・・。それと同じ効果を、江戸の人たちもやっていた。
ビタミン剤とか疲労回復剤なんどが発明・発見される、はるか以前のことである。
私たちの体を活性させる一番の妙薬は、体を動かすエネルギーを補給することである。それは、枯渇した糖分を補給すればいいのだ。糖分でなく、デンプン質でもいいし、アルコール分なら、より効き目は早く来る。ウソと思うなら、お手元のドリンク剤の成分をよく読んでみてほしい。
ごはんのデンプンを、麹の力で糖化した『甘酒』は、江戸の人の夏の飲み物だった。甘酒売りから甘酒を買って飲む。そうすれば疲労感はすっ飛ぶのだ。
それに、少量のアルコールが入っていれば、効果は倍増する。「甘酒なんて女・子どもの飲み物だ」とおっしゃる飲んベイ、江戸っ子はそれなりの智恵を働かせた。
彼らは夏の真っ盛りの飲物に「柳」に「陰」と書いて「柳陰」というのを愛用した。それは、酒屋で売っているのではなく、自分で作ったのである。
作り方はいたって簡単。酒にみりんを加えるだけだ。みりんは主に調理に使われる甘さとうまみ材である。甘さがたっぷりはいったアルコール系飲料だから、エネルギー欠乏時の活性剤としてはまさにずばりの飲物である。
ウソだと思う人は、ドリンク剤の成分をもう一度お読みください。
文中に出てくる「柳陰(やなぎかげ)」という酒、気になりますよね。古典落語の『青菜』に登場する酒です。
「植木屋さん、こっち来て一杯やらんかいな。」
「へえ。旦那さん。おおきにありがとさんでございます。」
「一人で飲んでてもおもろあらへん。植木屋さん相手に一杯飲もうと用意してましたのじゃ。どや、あんた柳蔭飲まんか。」
「へっ! 旦那さん、もうし、柳蔭ちゅうたら上等の酒やおまへんか。いただいてよろしいんで?」
「遠慮せんでよろし。こうして冷やしてました。さあ、注いだげよ。」「こら、えらいありがたいことでおます。」
ってな感じの軽妙なやりとり。最初に聴いたとき、「柳陰」ってどこの蔵元のどんな高級酒かと思いましたが、調べてみたら、焼酎をみりんで割った“酒カクテル”だったんです。
確かに丁寧に醸造された本みりんは、ストレートでも飲める美味しさ。度数の高いアルコールとブレンドすれば、アルコール由来のつんつんとした辛さを甘くまろやかにコーティングしてくれるでしょう。オンザロックやソーダ水で割れば、度数が低くなり、グイグイ爽快に飲めます。
そこでさっそく、自宅で愛用している杉井酒造(藤枝市)が醸造する『飛鳥山』と、広島県福山市の『保命酒』を、(焼酎は買い置きしていないので)それぞれ日本酒に半量混ぜてロックにして飲んでみたら、篠田氏ご指摘のとおり、時々飲む栄養ドリンク剤からクスリ臭さや香料臭さを除去したような、自然の甘みがふんわり口中に広がり、ビックリするほど美味しかった。この時期の滋養強壮にピッタリだと実感しました。

杉井酒造の純米みりん「飛鳥山」、「杉錦」夏の純米吟醸、杉錦米焼酎「才助」
ちなみに、保命酒というのは、広島県福山市鞆の浦で江戸時代から造られている薬草酒。2007年静岡市製作の映画『朝鮮通信使~駿府発二十一世紀の使行録』の脚本を担当したとき、鞆の浦で見つけた通信使ゆかりの地酒です。幕末には、老中阿部正弘(福山藩主)が下田でペリー一行にこの酒を振舞ったという逸話も残っています。興味のある方はこちらのブログを参照してください。
http://mayumi-s-jizake.blogzine.jp/blog/2010/05/post_9428.html

保命酒は16種類の薬草を使った本みりん
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
体力が落ちているとき、人は甘いものを欲するといいます。以前、このコラムで鑑評会出品酒が甘い酒になっているのは、甘い=オイシイの代名詞になっているのでは?と指摘し、何でもかんでも甘味を第一評価するというのは、現代日本人が疲れている、あるいは味覚が原始化?しているのでは、と考えさせられました。自分も、日本酒に甘味や酸味を加えてアレンジしたくなるのは、やっぱりいつもの調子じゃないときだって自覚します。
日本酒は、夏を越し、涼しくなる秋口からグーンと旨味が増してくるといわれます。それは、熟成の妙だけでなく、受け止める人間の味覚も“本調子”に戻ってくるからじゃないでしょうか。
自分も、この暑さがひと段落したら、日本酒本来の香味バランスと繊細な渋味や辛さを美味しく感じられる状態に戻れるんじゃないか、と期待しつつ、それまでは江戸っ子の知恵や流儀を上手に取り入れ、汗をかきかき、今夜も冷蔵庫や調味料棚を物色しています。杉井酒造では、日本酒「杉錦」、焼酎「才助」、みりん「飛鳥山」が揃っているので、杉錦トリプルブレンドに挑戦してみようかな。
◆杉井酒造公式サイト
http://suginishiki.com/
◆「保命酒」醸造元 岡本亀太郎本店公式サイト
http://www.honke-houmeishu.com/
Posted by 日刊いーしず at 12:00