2013年02月15日
第3回 スルメにワインが合わない理由
昨年末、ポートランドに住む妹夫婦が久しぶりに帰省しました。妹の夫ショーンは大のビール好きで、アメリカではマイクロブルワリー(小規模の地ビール醸造所)を訪ね歩くのが趣味ですが、日本酒の美味しさもちゃんと理解できるようで、しずおかオンラインの海野尚史社長はじめ私の酒友と一緒に『喜久酔』と『磯自慢』を訪問し、酒造りのきめ細やかさにすっかり魅了されていました。先日もあるテレビ番組で、フランス人ソムリエや在日外国人たちが日本酒をテイスティングして絶賛していたシーンが流れていました。日本食ブームの追い風にのって、海外輸出量も少しずつ伸びているようですね。
この『日刊いーしず』で海野社長と対談したとき(こちら)も、日本酒の味わい方や食べ合わせについてあれこれ訊かれ、あらためて、日本酒の美味しさって何だろう・・・と考えてみました。
私が地酒の取材を始めたのは平成元年2月、ちょうど25年前です。そして5年前の平成20年1月に始めたのが、ドキュメンタリー映画『吟醸王国しずおか』の制作。仕事で映画作りに関わったことをきっかけに、長年見守り続けてきた酒造職人さんたちの雄姿を動画で残しておきたいと考え、様々な方々に資金カンパをいただいて自主制作で取り組んでいます(お恥かしながら現在、資金不足で足踏み状態ですが・・・)。で、今年からこの連載のスタート。たまたまですが、こうしてみると、なんとなく、節目節目で新しいことを始めているんですね。でも、25年前を振り返ってみると、静岡の地酒に出会う前までは日本酒にこんなにハマるとは想像もしていなかったし、体質的には(アルコールに)強いほうではないし、日本酒の味に大感動したって経験もなし。仕事の枠を超え、25年もこういう活動を続けてこられたのは、やっぱり、さまざまな食体験を通して日本酒が心底美味しいなあと思えるようになったからです。
海野社長との対談の後、ふと思い出したのは、5年前の2008年5月、『吟醸王国しずおか』の撮影で訪ねた広島市での独立行政法人酒類総合研究所講演会。専門研究員による『清酒成分と生理的美味しさの関係』という研究発表です。当時の取材ノートを紐解いてみると―
「ヒトと動物(ラットやマウスで実験)の清酒の嗜好は、生理的な差(=体調や心理状態によって生じる違い)はないが、口腔内刺激(=きき酒で感じる味・香り・口当たり等)には差があり、飲酒初心者と経験者でも同様の結果となった。とくに初心者は空腹時と摂食時では嗜好が大きく異なる」
とあります。たぶんパワーポイントの解説文をそのまんま書き取っただけの味気のないメモですが(苦笑)、要訳すると、
(1)その日の体調や気分によって感じる『生理的美味しさ』は、人間と動物では共通している。ノドが渇いている時のビールの最初の1杯がむちゃくちゃ美味しい!って感覚。ふだんから呑む人も呑まない人も同じ。
(2)香りや口当たりによって感じる美味しさは人間と動物では違う。ふだんから呑む人と呑まない人でも違う。とくに呑まない人は、一緒に食べる料理が大きく影響する。
ってことでしょうか。
まず(1)の『生理的美味しさ』ですが、マウスに何種類かの日本酒を飲ませたところ、より好んでたくさん飲んだ酒=生理的に美味しいと感じた酒を飲むと、体にとってよくない変化=血糖値の低下・ケトン体や遊離脂肪酸の上昇などを起こしにくいという結果だったそうです。好みでない酒は、体にもよくない症状が起きたってことでしょう。解りやすい・・・!
成分分析したところ、生理的に美味しく、体に負担をかけない酒には「グルコース」「リジン」「ヒスチジン」が影響していたとのこと。
ご存知の通り「グルコース」はブドウ糖のこと。日本酒とは、お米のデンプンが麹によって糖化され、これを酵母が栄養にしてアルコールを作るわけで、いわば醸造酒成分の代表格です。
「リジン」と「ヒスチジン」はアミノ酸の一種です。日本酒にはアルギニン、チロシン、セリン、ロイシン、グルタミン酸など約20種類のアミノ酸が含まれ、旨味のもとを構成しているのですが、リジンというのは、たんぱく質の吸収を促進させ、ブドウ糖の代謝やカルシウムの吸収にも重要な働きを担う有効成分で、細菌やウイルスに対する抗体を作って免疫力を上げたり、脳卒中の発症を抑制する作用もあり、食品ではマグロ、サワラ、サバ、小麦胚芽、卵黄、しらす干し、そば、大豆、高野豆腐、納豆などに多く含まれています。
一方、ヒスチジンは抗酸化作用・ストレス解消に効果があるといわれるアミノ酸。食品では鶏肉、子牛肉、チェダーチーズ、マグロ、カツオ、サンマ、イワシなどに多く含まれています。
これら成分が1杯の日本酒にどれほど含まれ、どのような影響を与えるのか、機会があったら専門家にちゃんと取材してみたいと思いますが、美味いという感じ方は、体にもマルなんだと判って、しみじみ嬉しくなりました。
世の中には、美味しいけど体にワルそうという食べ物・飲み物は少なくないんですから、日本酒でこういう科学的実証が得られたってことは、左党には心強い限り。やっぱり、長年飲まれて来た伝統酒だけのことはあります。酒肴は、リジンやヒスチジンが多く含まれる赤身魚、青魚、大豆製品、乳製品類をうまく組み合わせるとよいのかもしれませんね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(2)では食品とお酒の相性について検証しています。食べ合わせの科学的な解明というのは、実はあまり進んでいないそうですが、発表者はシーフードと日本酒・ワインの相性について解説してくれました。評価者18人による実験で、「スルメ」をかみながら日本酒と白ワインを飲み比べてみたところ、白ワインのほうが、エグ味・苦味・生臭みを強く感じたとのこと。・・・実は今、書きながら自分も味見しているんですが、確かにおススメできない食べ合わせです(苦笑)。
シーフードに含まれる多価不飽和脂肪酸=有名なのはDHA(ドコサヘキサエン酸)=は、劣化すると、カルボニル化合物という不快な香り成分に変化します。そこで、日本酒と白ワインにDHAを添加して変化を比べてみたところ、日本酒ではほとんど変化がなかったのに対し、白ワインでは明らかにカルボニル化合物が増加したそう。ワインに含まれる亜硫酸がDHAの酸化=劣化を促進したようです。
発表者は「亜硫酸の少ないワインや無添加のワイン、多価不飽和脂肪酸が少ないシーフード(白身魚、エビ、カニ等)を選べばよい」と結論付けました。DHAってアタマがよくなるありがたい成分だと思っていましたが、ワイン党には味覚的に要注意のようです。
テッパンだけど、私が好きな(+リジンやヒスチジンが多く含まれる)、静岡酒と食べ合わせのよい料理例


せいろそば、豆腐鍋


桜えびのかきあげ×マグロのホホ肉、刺身の盛り合わせ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
講演会では、日本酒の消費アンケートについての紹介もありました。取材ノートには、
「アンケートで日本酒を飲む回数が増えたと答えた人の理由は、“おいしく感じるようになったから”“知る・わかる・目覚める・出会う”“和食・日本料理に合うから”が多い。他のアルコールと比較してもきわめて多い」
「日本酒を飲む量が増えたと答えた人の中で、20代では“好みのタイプはわからない”“自分では買ったことがない”との回答が多かった」
とのメモ書き。そういえば、会場から「飲む回数が増えた人の解析よりも、飲まなくなった人の解析をすべきではないか」という質問があり、発表者は「飲まない理由を分析したところで、それに対処する手立てを考えるのは容易ではない。むしろ飲むようになった人の動機を参考にするほうが有益だと思う」と答えていました。質問者(どこかの蔵元さん)は不満げな顔でしたが、私も、マイナス要因よりもプラス要因を伸ばそうという意見に賛成です。
この講演会の聴講者は醸造関係者がほとんどでしたが、こういう解説は酒販店や飲食店やフードコーディネーター・きき酒師など消費者と直につながる人たちも聞くべきだし、プラス要因を伸ばす知恵やアイディアは、消費動向の現場に居る彼らのほうが持っています。毎年5月下旬に東広島市で行われる全国新酒鑑評会一般公開の前日に同市内で開かれますので、興味のある人は(独)酒類総合研究所の公式サイトでチェックしてみてください。
→ http://www.nrib.go.jp/index.html
日本酒を美味しいと感じるきっかけは、食体験の積み重ねの中にあります。そもそもが、日本人の主食であるコメを原料とした醸造飲料。発酵過程で非常に多くの成分が生成され、相性のよい食品、機能性が高まる食品と出会うチャンスも、他のアルコールより格段に多い。外国人でも日本酒の美味しさが解るというのは、多様な味覚や嗜好の持ち主も受容でき、食べ合わせがしやすい飲み物だという証拠じゃないでしょうか。ワインにソムリエが必要なのは、「スルメ」の例ではありませんが、それだけ食べ合わせが難しいということでしょう。
最近出会う日本酒ファンの多くは、単に呑ん兵衛というのではなく、食べること自体が好きで好奇心や探究心が旺盛です。食材が豊富な静岡に暮らす皆さんは、難しく考えないで、とにかくいろんな食べ合わせを楽しんでみてください。そして興味が湧いたら、「好きなお酒をもっと美味しく、健康的に飲める食べ合わせ」について、さらに突っ込んで探求してみてください。豊かな食体験を持つ飲み手は、酒の売り手や造り手のモチベーションを向上させてくれるはずです。
◆お酒の知識・雑学等は(独)酒類総合研究所公式サイトのこちらのページで専門家が一般向けにわかりやすく解説しています。
→ http://www.nrib.go.jp/sake/sakeinfo.htm
この『日刊いーしず』で海野社長と対談したとき(こちら)も、日本酒の味わい方や食べ合わせについてあれこれ訊かれ、あらためて、日本酒の美味しさって何だろう・・・と考えてみました。
私が地酒の取材を始めたのは平成元年2月、ちょうど25年前です。そして5年前の平成20年1月に始めたのが、ドキュメンタリー映画『吟醸王国しずおか』の制作。仕事で映画作りに関わったことをきっかけに、長年見守り続けてきた酒造職人さんたちの雄姿を動画で残しておきたいと考え、様々な方々に資金カンパをいただいて自主制作で取り組んでいます(お恥かしながら現在、資金不足で足踏み状態ですが・・・)。で、今年からこの連載のスタート。たまたまですが、こうしてみると、なんとなく、節目節目で新しいことを始めているんですね。でも、25年前を振り返ってみると、静岡の地酒に出会う前までは日本酒にこんなにハマるとは想像もしていなかったし、体質的には(アルコールに)強いほうではないし、日本酒の味に大感動したって経験もなし。仕事の枠を超え、25年もこういう活動を続けてこられたのは、やっぱり、さまざまな食体験を通して日本酒が心底美味しいなあと思えるようになったからです。
海野社長との対談の後、ふと思い出したのは、5年前の2008年5月、『吟醸王国しずおか』の撮影で訪ねた広島市での独立行政法人酒類総合研究所講演会。専門研究員による『清酒成分と生理的美味しさの関係』という研究発表です。当時の取材ノートを紐解いてみると―
「ヒトと動物(ラットやマウスで実験)の清酒の嗜好は、生理的な差(=体調や心理状態によって生じる違い)はないが、口腔内刺激(=きき酒で感じる味・香り・口当たり等)には差があり、飲酒初心者と経験者でも同様の結果となった。とくに初心者は空腹時と摂食時では嗜好が大きく異なる」
とあります。たぶんパワーポイントの解説文をそのまんま書き取っただけの味気のないメモですが(苦笑)、要訳すると、
(1)その日の体調や気分によって感じる『生理的美味しさ』は、人間と動物では共通している。ノドが渇いている時のビールの最初の1杯がむちゃくちゃ美味しい!って感覚。ふだんから呑む人も呑まない人も同じ。
(2)香りや口当たりによって感じる美味しさは人間と動物では違う。ふだんから呑む人と呑まない人でも違う。とくに呑まない人は、一緒に食べる料理が大きく影響する。
ってことでしょうか。
まず(1)の『生理的美味しさ』ですが、マウスに何種類かの日本酒を飲ませたところ、より好んでたくさん飲んだ酒=生理的に美味しいと感じた酒を飲むと、体にとってよくない変化=血糖値の低下・ケトン体や遊離脂肪酸の上昇などを起こしにくいという結果だったそうです。好みでない酒は、体にもよくない症状が起きたってことでしょう。解りやすい・・・!
成分分析したところ、生理的に美味しく、体に負担をかけない酒には「グルコース」「リジン」「ヒスチジン」が影響していたとのこと。
ご存知の通り「グルコース」はブドウ糖のこと。日本酒とは、お米のデンプンが麹によって糖化され、これを酵母が栄養にしてアルコールを作るわけで、いわば醸造酒成分の代表格です。
「リジン」と「ヒスチジン」はアミノ酸の一種です。日本酒にはアルギニン、チロシン、セリン、ロイシン、グルタミン酸など約20種類のアミノ酸が含まれ、旨味のもとを構成しているのですが、リジンというのは、たんぱく質の吸収を促進させ、ブドウ糖の代謝やカルシウムの吸収にも重要な働きを担う有効成分で、細菌やウイルスに対する抗体を作って免疫力を上げたり、脳卒中の発症を抑制する作用もあり、食品ではマグロ、サワラ、サバ、小麦胚芽、卵黄、しらす干し、そば、大豆、高野豆腐、納豆などに多く含まれています。
一方、ヒスチジンは抗酸化作用・ストレス解消に効果があるといわれるアミノ酸。食品では鶏肉、子牛肉、チェダーチーズ、マグロ、カツオ、サンマ、イワシなどに多く含まれています。
これら成分が1杯の日本酒にどれほど含まれ、どのような影響を与えるのか、機会があったら専門家にちゃんと取材してみたいと思いますが、美味いという感じ方は、体にもマルなんだと判って、しみじみ嬉しくなりました。
世の中には、美味しいけど体にワルそうという食べ物・飲み物は少なくないんですから、日本酒でこういう科学的実証が得られたってことは、左党には心強い限り。やっぱり、長年飲まれて来た伝統酒だけのことはあります。酒肴は、リジンやヒスチジンが多く含まれる赤身魚、青魚、大豆製品、乳製品類をうまく組み合わせるとよいのかもしれませんね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(2)では食品とお酒の相性について検証しています。食べ合わせの科学的な解明というのは、実はあまり進んでいないそうですが、発表者はシーフードと日本酒・ワインの相性について解説してくれました。評価者18人による実験で、「スルメ」をかみながら日本酒と白ワインを飲み比べてみたところ、白ワインのほうが、エグ味・苦味・生臭みを強く感じたとのこと。・・・実は今、書きながら自分も味見しているんですが、確かにおススメできない食べ合わせです(苦笑)。
シーフードに含まれる多価不飽和脂肪酸=有名なのはDHA(ドコサヘキサエン酸)=は、劣化すると、カルボニル化合物という不快な香り成分に変化します。そこで、日本酒と白ワインにDHAを添加して変化を比べてみたところ、日本酒ではほとんど変化がなかったのに対し、白ワインでは明らかにカルボニル化合物が増加したそう。ワインに含まれる亜硫酸がDHAの酸化=劣化を促進したようです。
発表者は「亜硫酸の少ないワインや無添加のワイン、多価不飽和脂肪酸が少ないシーフード(白身魚、エビ、カニ等)を選べばよい」と結論付けました。DHAってアタマがよくなるありがたい成分だと思っていましたが、ワイン党には味覚的に要注意のようです。
テッパンだけど、私が好きな(+リジンやヒスチジンが多く含まれる)、静岡酒と食べ合わせのよい料理例
せいろそば、豆腐鍋

桜えびのかきあげ×マグロのホホ肉、刺身の盛り合わせ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
講演会では、日本酒の消費アンケートについての紹介もありました。取材ノートには、
「アンケートで日本酒を飲む回数が増えたと答えた人の理由は、“おいしく感じるようになったから”“知る・わかる・目覚める・出会う”“和食・日本料理に合うから”が多い。他のアルコールと比較してもきわめて多い」
「日本酒を飲む量が増えたと答えた人の中で、20代では“好みのタイプはわからない”“自分では買ったことがない”との回答が多かった」
とのメモ書き。そういえば、会場から「飲む回数が増えた人の解析よりも、飲まなくなった人の解析をすべきではないか」という質問があり、発表者は「飲まない理由を分析したところで、それに対処する手立てを考えるのは容易ではない。むしろ飲むようになった人の動機を参考にするほうが有益だと思う」と答えていました。質問者(どこかの蔵元さん)は不満げな顔でしたが、私も、マイナス要因よりもプラス要因を伸ばそうという意見に賛成です。
この講演会の聴講者は醸造関係者がほとんどでしたが、こういう解説は酒販店や飲食店やフードコーディネーター・きき酒師など消費者と直につながる人たちも聞くべきだし、プラス要因を伸ばす知恵やアイディアは、消費動向の現場に居る彼らのほうが持っています。毎年5月下旬に東広島市で行われる全国新酒鑑評会一般公開の前日に同市内で開かれますので、興味のある人は(独)酒類総合研究所の公式サイトでチェックしてみてください。
→ http://www.nrib.go.jp/index.html
日本酒を美味しいと感じるきっかけは、食体験の積み重ねの中にあります。そもそもが、日本人の主食であるコメを原料とした醸造飲料。発酵過程で非常に多くの成分が生成され、相性のよい食品、機能性が高まる食品と出会うチャンスも、他のアルコールより格段に多い。外国人でも日本酒の美味しさが解るというのは、多様な味覚や嗜好の持ち主も受容でき、食べ合わせがしやすい飲み物だという証拠じゃないでしょうか。ワインにソムリエが必要なのは、「スルメ」の例ではありませんが、それだけ食べ合わせが難しいということでしょう。
最近出会う日本酒ファンの多くは、単に呑ん兵衛というのではなく、食べること自体が好きで好奇心や探究心が旺盛です。食材が豊富な静岡に暮らす皆さんは、難しく考えないで、とにかくいろんな食べ合わせを楽しんでみてください。そして興味が湧いたら、「好きなお酒をもっと美味しく、健康的に飲める食べ合わせ」について、さらに突っ込んで探求してみてください。豊かな食体験を持つ飲み手は、酒の売り手や造り手のモチベーションを向上させてくれるはずです。
◆お酒の知識・雑学等は(独)酒類総合研究所公式サイトのこちらのページで専門家が一般向けにわかりやすく解説しています。
→ http://www.nrib.go.jp/sake/sakeinfo.htm
---------------------------------------------------------
◆このコラムの著者・鈴木真弓さんのインタビューを、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
鈴木真弓さんと静岡の地酒の出会い、これまでの経緯、日本酒の美味しい飲み方などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e989117.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e991908.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e995219.html
◆このコラムの著者・鈴木真弓さんのインタビューを、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
鈴木真弓さんと静岡の地酒の出会い、これまでの経緯、日本酒の美味しい飲み方などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e989117.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e991908.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e995219.html
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年02月01日
第2回 磯自慢入手顛末記
昨年末のことです。沼津の観光記事を書くため、昔からお世話になっていた沼津市内の某社長のもとへリサーチに行ったとき、その社長さんから「磯自慢が手に入らなくて困っている」と言われました。暮れのギフトでどうしても必要だが、沼津市内の酒販店では必要本数が入手できないと。磯自慢の取扱い販売店では全国どこでも「お一人様1本限り」の断り書きが貼ってあるんですね。
今や、静岡が誇るトップブランドとなった『磯自慢』。地酒に詳しくない人も一度は耳にする酒銘でしょう。焼津にある磯自慢酒造は、平成元年2月―ちょうど25年前に初めて取材した思い出深い酒蔵で、蔵元の寺岡洋司さんとも25年のおつきあいになります。でも、いくらつきあいが長いからといっても、ただの酒呑みライターが「1本限り」の原則を曲げることなんて出来ません。
沼津の社長さんからは「困っている」と言われただけで、「手に入れて」と頼まれたわけではありませんが、地酒のことで困っていると聞けば何とかしたいし、恩ある社長さんに報いるにはそれしかないだろうと、県内で磯自慢を取り扱う酒販店1軒1軒を回ってかき集められるだけ集めて社長さんに届けました。必要本数には届かなかったものの、とりあえず社長さんのホッとした表情が見られて、こちらも肩をなでおろしました。と同時に、改めて、『磯自慢』という酒のブランドパワーに息を呑む思いがしました。
25年前は、地元焼津を除けばよほどの酒通でなければ海苔の佃煮かふりかけの名前だと思われていたかもしれません。なぜ今、これほどまでに入手困難になったのか、これまでも、いろいろな人から訊かれました。某百貨店の社長さんからは直々に、「なぜ百貨店で磯自慢を取り扱えないのか」と聞かれ、自分が軽々に応えるのはまずいと思い、寺岡さんに「どうお返事しましょうか」と相談をしに行ったことも。そのときの経緯や、磯自慢が入手しにくい理由については、私なりの解釈でこちらの記事にまとめてあるのでご一読ください。
→リンク「吟醸王国しずおか」映像製作委員会オフィシャルサイト
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
テレビコマーシャルで大々的に宣伝する大手ブランドとは違い、地方の、ましてや酒どころのイメージのない静岡の地酒の場合、蔵元自身の広報力だけでブランドパワーを獲得するのは至難の業です。加えて日本列島のほぼ真ん中の、東海道ベルト地帯にある静岡は物流が発達しているので、全国津々浦々から有名地酒が入ってきます。静岡県内で呑まれる日本酒のうち、県産酒のシェアは実は2割以下なんです。
戦後の高度経済成長時代は黙っていても日本酒が売れていた時代でした。卸問屋や小売店にしてみれば、注文した量をすぐに納入してくれる、ついでにおまけしてくれる、サービスで看板を付けてくれたりする酒蔵を重宝します。一方、そんな“余力”のない中小酒蔵は、造った酒のうち、地元で細々売る以外は、灘や伏見の大手酒蔵に桶売り(OEM供給)するなどして、必死に生き残りを図っていました。やがて大手が輸送コストのかかる桶買いをやめて自主生産体制を整えると、桶売りに頼っていた酒蔵は自立、事業縮小、あるいは転業・廃業の選択を迫られます。
このとき自立の道を選んだ酒蔵は、量より質にギアチェンジし、それまでコンテスト用に少量試作していた吟醸酒の市販化に取り組みました。これを強力に後押ししたのが、静岡県工業技術センター開発の『静岡酵母』。昭和50年代後半~60年代にかけ、県内酒造業がドラスティックに構造転換した時代でした。
磯自慢酒造は、桶売りに頼らず、一貫して『磯自慢』として造り続け、売り続けてきた蔵でした。地元焼津は新鮮な海の幸の宝庫。口の肥えた客や料理人が集まる日本有数の港町、という土地柄も手伝い、蔵元の酒質に対する意識は大いに磨かれていたのでしょう。しかし焼津から一歩外へ出れば、酒の市場は荒波の渦。家業に入る前、酒の流通会社で修業をし、市場の渦の激しさを目の当たりにしていた寺岡さんは、「うちも一層、質を磨いていくしかないが、品質を上げれば黙っても売れるほど世の中は甘くない。市場に認知され、信頼される努力をしなければ」と実感します。蔵に戻るや、上記記事でふれたように次々と蔵の改造・改築に着手し、暖地静岡のイメージリスクを払拭するような、完璧な低温管理醸造所を創り上げました。


焼津港と小川港の中間にある磯自慢酒造。搾りたてを試飲する蔵元寺岡洋司さん(左)と杜氏の多田信男さん
同じ頃、同様に、テレビコマーシャルで名の知れた銘柄を並べておけば黙っていても売れる時代ではない、卸問屋に依存し、他店と同じ商品を並べるだけでは価格競争に巻き込まれる、と危機意識を持った小売酒販店がいました。それが、東京の「はせがわ酒店」、静岡の「ヴィノスやまざき」等、磯自慢の名パートナーとなった酒販店です。彼らは卸問屋に頼らず、小さいながらもキラリと光るダイヤの原石のような地方の蔵を自らの足で発掘し、リスクを分かち合いながら必死に営業努力を重ねました。
自分の酒を無名の頃から買い支えると言い切ってくれた、そんなパートナーへの恩を、寺岡さんは今でも大切にし、生産量や新規取引先を無計画に増やすようなことはしません。

若い蔵人たちが躍動する洗米作業
2008年のG8北海道洞爺湖サミットの晩餐会乾杯酒に選ばれたことで、磯自慢の人気にさらに拍車がかかりました。
サミット酒=日本を代表する国酒、という最上級のブランドパワーがついた以上、品質は絶対に落とせませんし、品質を落とせないという理由で量を減らすことも出来ないでしょう。

サミットに使われた中取り純米大吟醸35
ブランドとは、高い品質を安定供給できる信頼の証。現場の杜氏さんや蔵人衆の肩にかかるプレッシャーは相当なものだと想像しますが、現場の皆さんは蔵を訪ねるたびに意気揚々と迎えてくれます。緊張の中にも、期待されることへの充足感があるんですね。「働き甲斐のある仕事場なんだな」と、こちらもワクワクしてきます。そんな現場を作り上げた寺岡さんは、私が知る限り、国酒にふさわしい日本屈指の酒造家だと明言できます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昨年末、私が磯自慢を求めて県内酒販店を駆けずり回っていた頃、寺岡さんの名パートナーだったヴィノスやまざき(静岡市葵区常磐町)の山崎巽会長が亡くなりました。
山崎さんは、私が初めて手がけた新聞全面広告のスポンサーであり、「マユミさんの思い通りに作ってみなさい」とチャンスをくれた、私にとっても得難い恩人です。毎日新聞で1997~98年に連載していたコラムでは静岡酒の功労店として似顔絵付きで紹介。一線を退かれた後も、時折、「最近の酒の事情を聞きたい」と連絡をもらい、お茶を飲みにうかがったりしていました。
年明け8日に執り行われたお別れの会には、私のほうが風邪で体調を崩して参列できませんでしたが、2日後、東京の広尾へ取材に行ったとき、ヴィノスやまざき広尾店で磯自慢のやまざき限定新酒を見つけ、思わず購入してしまいました。
取材先というのは某国大使館。執筆を手がける静岡県広報誌の看板企画・川勝知事と各国大使の対談コーナー取材です。訪問時には手土産として、編集スタッフが静岡県産マスクメロンを用意するのが常でしたが、対談で食の話題になると、知事は「わが県には、洞爺湖サミットで乾杯酒に選ばれた名酒がある」と自慢げに話されることがあるので、迷惑にはならないだろう、と、買ったばかりの磯自慢を手土産に加えてもらいました。
案の定、知事は満面得意顔で「サミットの酒です!」と大使に差し出したものの、実は、私が買った限定新酒というのは、サミットで使われた最高級の中取り純米大吟醸35ではなく、ハウスワイン価格の本醸造。ヴィノスやまざき広尾店は大使館の目と鼻の先ですから、行けば、バレバレです(苦笑)。それでも、磯自慢という酒は本醸造だろうと大吟醸だろうと、日本を代表する国酒に違いない、その称号にふさわしい経営努力を寺岡さんはされてきたのだという私なりの確信があってのこと。その素晴らしい酒をテーブルヌーヴォーとして手軽に味わえるようヴィノスやまざきが企画した、ある意味、お宝な逸品です。こうして取材前に偶然手にしたのは、山崎さんが天空から呼びかけてくださったのでは、と思いました。
知事のニコニコ顔を見ていたら、磯自慢のような造り手やヴィノスやまざきのような売り手が地元に存在することが、静岡の酒全体のブランドパワーをどれだけ押し上げたのか計り知れない、と実感しました。今、磯自慢の取扱いのない酒販店の中にも、自分が惚れた酒を全力で買い支えようと努力する若い酒販店主や、彼らが開拓した飲食店主が数多く育っています。飲み手の私たちがいいお酒にめぐり合うチャンスとは、いい売り手との出会いに他なりません。山崎さんは生涯をかけ、そのことを実証してくれた先達でした。
対談取材が終わって大使館の門を出たとき、夕闇に染まる空を見上げて、「今日、広尾店にはたまたま本醸造しか置いてなかったんですが、大丈夫ですよね」と、手を合わせました。山崎さんは「うちが全力で売る酒に文句は言わせない」と応えてくれるはず・・・そう、確信しています。

毎日新聞「しずおか酒と人」に掲載した山崎巽さんのイラスト
※『磯自慢』の取扱い店はこちらの公式サイトをご参照ください。
→http://www.isojiman-sake.jp/jp/
今や、静岡が誇るトップブランドとなった『磯自慢』。地酒に詳しくない人も一度は耳にする酒銘でしょう。焼津にある磯自慢酒造は、平成元年2月―ちょうど25年前に初めて取材した思い出深い酒蔵で、蔵元の寺岡洋司さんとも25年のおつきあいになります。でも、いくらつきあいが長いからといっても、ただの酒呑みライターが「1本限り」の原則を曲げることなんて出来ません。
沼津の社長さんからは「困っている」と言われただけで、「手に入れて」と頼まれたわけではありませんが、地酒のことで困っていると聞けば何とかしたいし、恩ある社長さんに報いるにはそれしかないだろうと、県内で磯自慢を取り扱う酒販店1軒1軒を回ってかき集められるだけ集めて社長さんに届けました。必要本数には届かなかったものの、とりあえず社長さんのホッとした表情が見られて、こちらも肩をなでおろしました。と同時に、改めて、『磯自慢』という酒のブランドパワーに息を呑む思いがしました。
25年前は、地元焼津を除けばよほどの酒通でなければ海苔の佃煮かふりかけの名前だと思われていたかもしれません。なぜ今、これほどまでに入手困難になったのか、これまでも、いろいろな人から訊かれました。某百貨店の社長さんからは直々に、「なぜ百貨店で磯自慢を取り扱えないのか」と聞かれ、自分が軽々に応えるのはまずいと思い、寺岡さんに「どうお返事しましょうか」と相談をしに行ったことも。そのときの経緯や、磯自慢が入手しにくい理由については、私なりの解釈でこちらの記事にまとめてあるのでご一読ください。
→リンク「吟醸王国しずおか」映像製作委員会オフィシャルサイト
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
テレビコマーシャルで大々的に宣伝する大手ブランドとは違い、地方の、ましてや酒どころのイメージのない静岡の地酒の場合、蔵元自身の広報力だけでブランドパワーを獲得するのは至難の業です。加えて日本列島のほぼ真ん中の、東海道ベルト地帯にある静岡は物流が発達しているので、全国津々浦々から有名地酒が入ってきます。静岡県内で呑まれる日本酒のうち、県産酒のシェアは実は2割以下なんです。
戦後の高度経済成長時代は黙っていても日本酒が売れていた時代でした。卸問屋や小売店にしてみれば、注文した量をすぐに納入してくれる、ついでにおまけしてくれる、サービスで看板を付けてくれたりする酒蔵を重宝します。一方、そんな“余力”のない中小酒蔵は、造った酒のうち、地元で細々売る以外は、灘や伏見の大手酒蔵に桶売り(OEM供給)するなどして、必死に生き残りを図っていました。やがて大手が輸送コストのかかる桶買いをやめて自主生産体制を整えると、桶売りに頼っていた酒蔵は自立、事業縮小、あるいは転業・廃業の選択を迫られます。
このとき自立の道を選んだ酒蔵は、量より質にギアチェンジし、それまでコンテスト用に少量試作していた吟醸酒の市販化に取り組みました。これを強力に後押ししたのが、静岡県工業技術センター開発の『静岡酵母』。昭和50年代後半~60年代にかけ、県内酒造業がドラスティックに構造転換した時代でした。
磯自慢酒造は、桶売りに頼らず、一貫して『磯自慢』として造り続け、売り続けてきた蔵でした。地元焼津は新鮮な海の幸の宝庫。口の肥えた客や料理人が集まる日本有数の港町、という土地柄も手伝い、蔵元の酒質に対する意識は大いに磨かれていたのでしょう。しかし焼津から一歩外へ出れば、酒の市場は荒波の渦。家業に入る前、酒の流通会社で修業をし、市場の渦の激しさを目の当たりにしていた寺岡さんは、「うちも一層、質を磨いていくしかないが、品質を上げれば黙っても売れるほど世の中は甘くない。市場に認知され、信頼される努力をしなければ」と実感します。蔵に戻るや、上記記事でふれたように次々と蔵の改造・改築に着手し、暖地静岡のイメージリスクを払拭するような、完璧な低温管理醸造所を創り上げました。
焼津港と小川港の中間にある磯自慢酒造。搾りたてを試飲する蔵元寺岡洋司さん(左)と杜氏の多田信男さん
同じ頃、同様に、テレビコマーシャルで名の知れた銘柄を並べておけば黙っていても売れる時代ではない、卸問屋に依存し、他店と同じ商品を並べるだけでは価格競争に巻き込まれる、と危機意識を持った小売酒販店がいました。それが、東京の「はせがわ酒店」、静岡の「ヴィノスやまざき」等、磯自慢の名パートナーとなった酒販店です。彼らは卸問屋に頼らず、小さいながらもキラリと光るダイヤの原石のような地方の蔵を自らの足で発掘し、リスクを分かち合いながら必死に営業努力を重ねました。
自分の酒を無名の頃から買い支えると言い切ってくれた、そんなパートナーへの恩を、寺岡さんは今でも大切にし、生産量や新規取引先を無計画に増やすようなことはしません。
若い蔵人たちが躍動する洗米作業
2008年のG8北海道洞爺湖サミットの晩餐会乾杯酒に選ばれたことで、磯自慢の人気にさらに拍車がかかりました。
サミット酒=日本を代表する国酒、という最上級のブランドパワーがついた以上、品質は絶対に落とせませんし、品質を落とせないという理由で量を減らすことも出来ないでしょう。
サミットに使われた中取り純米大吟醸35
ブランドとは、高い品質を安定供給できる信頼の証。現場の杜氏さんや蔵人衆の肩にかかるプレッシャーは相当なものだと想像しますが、現場の皆さんは蔵を訪ねるたびに意気揚々と迎えてくれます。緊張の中にも、期待されることへの充足感があるんですね。「働き甲斐のある仕事場なんだな」と、こちらもワクワクしてきます。そんな現場を作り上げた寺岡さんは、私が知る限り、国酒にふさわしい日本屈指の酒造家だと明言できます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昨年末、私が磯自慢を求めて県内酒販店を駆けずり回っていた頃、寺岡さんの名パートナーだったヴィノスやまざき(静岡市葵区常磐町)の山崎巽会長が亡くなりました。
山崎さんは、私が初めて手がけた新聞全面広告のスポンサーであり、「マユミさんの思い通りに作ってみなさい」とチャンスをくれた、私にとっても得難い恩人です。毎日新聞で1997~98年に連載していたコラムでは静岡酒の功労店として似顔絵付きで紹介。一線を退かれた後も、時折、「最近の酒の事情を聞きたい」と連絡をもらい、お茶を飲みにうかがったりしていました。
年明け8日に執り行われたお別れの会には、私のほうが風邪で体調を崩して参列できませんでしたが、2日後、東京の広尾へ取材に行ったとき、ヴィノスやまざき広尾店で磯自慢のやまざき限定新酒を見つけ、思わず購入してしまいました。
取材先というのは某国大使館。執筆を手がける静岡県広報誌の看板企画・川勝知事と各国大使の対談コーナー取材です。訪問時には手土産として、編集スタッフが静岡県産マスクメロンを用意するのが常でしたが、対談で食の話題になると、知事は「わが県には、洞爺湖サミットで乾杯酒に選ばれた名酒がある」と自慢げに話されることがあるので、迷惑にはならないだろう、と、買ったばかりの磯自慢を手土産に加えてもらいました。
案の定、知事は満面得意顔で「サミットの酒です!」と大使に差し出したものの、実は、私が買った限定新酒というのは、サミットで使われた最高級の中取り純米大吟醸35ではなく、ハウスワイン価格の本醸造。ヴィノスやまざき広尾店は大使館の目と鼻の先ですから、行けば、バレバレです(苦笑)。それでも、磯自慢という酒は本醸造だろうと大吟醸だろうと、日本を代表する国酒に違いない、その称号にふさわしい経営努力を寺岡さんはされてきたのだという私なりの確信があってのこと。その素晴らしい酒をテーブルヌーヴォーとして手軽に味わえるようヴィノスやまざきが企画した、ある意味、お宝な逸品です。こうして取材前に偶然手にしたのは、山崎さんが天空から呼びかけてくださったのでは、と思いました。
知事のニコニコ顔を見ていたら、磯自慢のような造り手やヴィノスやまざきのような売り手が地元に存在することが、静岡の酒全体のブランドパワーをどれだけ押し上げたのか計り知れない、と実感しました。今、磯自慢の取扱いのない酒販店の中にも、自分が惚れた酒を全力で買い支えようと努力する若い酒販店主や、彼らが開拓した飲食店主が数多く育っています。飲み手の私たちがいいお酒にめぐり合うチャンスとは、いい売り手との出会いに他なりません。山崎さんは生涯をかけ、そのことを実証してくれた先達でした。
対談取材が終わって大使館の門を出たとき、夕闇に染まる空を見上げて、「今日、広尾店にはたまたま本醸造しか置いてなかったんですが、大丈夫ですよね」と、手を合わせました。山崎さんは「うちが全力で売る酒に文句は言わせない」と応えてくれるはず・・・そう、確信しています。

毎日新聞「しずおか酒と人」に掲載した山崎巽さんのイラスト
※『磯自慢』の取扱い店はこちらの公式サイトをご参照ください。
→http://www.isojiman-sake.jp/jp/
---------------------------------------------------------
◆このコラムの著者・鈴木真弓さんのインタビューを、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
鈴木真弓さんと静岡の地酒の出会い、これまでの経緯、日本酒の美味しい飲み方などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e989117.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e991908.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e995219.html
◆このコラムの著者・鈴木真弓さんのインタビューを、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
鈴木真弓さんと静岡の地酒の出会い、これまでの経緯、日本酒の美味しい飲み方などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e989117.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e991908.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e995219.html
Posted by 日刊いーしず at 12:00