2013年12月27日
第23回 かしこい酔い方
先日、取材で浜松商工会議所会頭の大須賀正孝氏から面白いお話をうかがいました。ご自身の会社では、次年度の利益目標を年始の宴席で立てるというのです。「会議室でしかめっ面をつき合わせて議論しても無難な数字しか出てこない。それでは企業は成長しない。経営幹部には、酒を飲んで気持ちが大きくなったところで、とんでもない数字を出させる。酔いが冷めて“実行不可能です”と青くなっても、本当に不可能な数字かどうか、皆で改めて冷静に分析し、一緒に方法を考え、実現させる」とのこと。実際、飲んだ勢いで決めた目標値-想定の倍額に向かって社内でムダを徹底的に絞り出すため日割り決算をし、日中の照明をこまめに消したりパート社員の残業を若干減らすなどして見事達成したそうです。
これまで、飲みすぎて失敗した話はゴマンと聞いてきましたが、大須賀会頭のこのお話は実に痛快でした。そう、酒には本当にいろいろな“効能”があるんです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
年末年始、何かと酒量が増える季節。新酒が出揃い、日本酒の世界も活況をみせます。造り手が丹精込めて醸した美酒。その実力をあますところなく堪能するには、まず我々飲み手の体調が万全であることが必須でしょう。
私の場合、宴席がある前の晩は、酒風呂に入って体調を整えます。少しぬるめの湯船にコップ2~3杯の日本酒を入れるだけ。血圧が安定し、湯冷めがしにくく、お肌もしっとり。ポカポカ気分で布団に入れます。本当は毎晩やりたいけど、適度に余り酒があるときだけのゼイタクです。
「今日は量を飲むな」と判っている日は、お昼や午後のデザートで乳製品を採るなどして胃に保護粘膜をつくっておきます。
きき酒を目的とした宴席では食事はほとんど採らず、続けざまに何種類も試飲します。でもこれは酒を試すときの飲み方であり、酒を楽しむときにはNGですね。
アルコールは十二指腸と小腸で吸収され、血液の流れに乗って全身に回る。そうして少しずつ血中アルコール濃度が高まり、“酔い”を自覚します。
しかし、飲むピッチが早くなったり量がかさむと、アルコールの吸収→巡回→酔いの自覚までのタイムラグが無視され、酔いを自覚する前に、知らず知らずに適量をオーバーし、結果的に悪酔いに陥ってしまいます。これを防ぐ意味でも、何かを食べながら飲む、ということが大事。アルコールは食べ物と一緒に胃にしばらく留まるので、吸収がゆるやかになるようです。
よく、日本人の一日あたりの適量は、日本酒なら2合まで、ビールなら大瓶2本まで、ワインならグラス2杯まで、焼酎やウイスキーの水割りなら3杯まで。これを1時間ぐらいかけて飲むのがベターと言われます。私もですが、本コラムの読者諸氏も、「この程度の量じゃおさまらない」と苦笑いしていることでしょう。ならばこそ、いろいろな食事をバラエティよく揃え、会話で盛り上げるなどして、出来る限り、アルコールの吸収速度をゆったり長持ちさせる工夫が必要なんですね。
ちなみに、辻クッキングスクールの味田節子先生によると「メタボ改善や健康長寿のためには、“三低晩酌”がおススメ」とのこと。三低とは、ずばり【低糖・低塩・低カロリー】。日本酒は1合で180キロカロリー・糖分9グラムですから、この分を差し引いて晩酌メニューを考えればよいわけです。
外飲みのときは、朝や昼の食事でバランスをとるようにします。私自身、太りやすい体質なので、ダイエット中はかなり神経質になっちゃいますが、いちいち気にしてストレスを抱えるよりも、大雑把に、「ちょっとお昼軽くしとこう」「翌朝軽めにしよ」と考えるようにしています。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日本酒の健康と効能については、秋田大学の滝澤行雄名誉教授の研究が知られています。おさらいしてみますと、
◆発ガン抑制
日本酒=肝臓によくないというイメージをもたれますが、実は、日本酒の消費量の多い東日本のほうが、西日本に比べて肝硬変や肝がんによる死亡率が低い。さらに日本酒の成分で膀胱がん、前立腺がん、子宮頸がんのがん細胞増殖抑制効果が認められた。日本酒にはアルコールのほか、有機酸、糖分、アミノ酸、ビタミン類など100種以上の微量成分が含まれ、これらががん細胞の萎縮や壊死を示す効果があると判明しています。
国立がん研究所の平山雄氏(故人)の研究により、毎日適量を飲酒する人は、まったく飲まない人に比べ、発ガンリスクが低いことも判明しています。おかずと一緒にいただく“晩酌”が健康効果と結びつき、大脳皮質を刺激してストレスを解消し、心の緊張をほぐすことも奏功しているのでしょう。
◆抗酸化作用
日本酒には悪玉コレステロールの酸化を防ぐ抗酸化作用があります。悪玉コレステロールは、酸化することで動脈硬化や心筋梗塞を引き起こすため、酸化を防ぐ効果が大事なんですね。
◆美肌効果
最近、大手化粧品メーカーでも“杜氏の手が白い”ことに着目し、麹酸を使った美白・保湿商品を大々的に宣伝していますが、日本酒の美肌効果は、昔から芸妓さんが日本酒を化粧水やパック代わりに使っていたことでも知られています。
私は酒風呂に入ったとき、風呂桶にお湯+純米酒コップ2分の1を溜めて洗顔マッサージをし、布巾を浸して即席パックをします。純米酒の無駄遣いと思われるかもしれませんが、化粧品代より安上がりだし(笑)、何より、口に入れるものだから安心安全です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
民俗学者の石毛直道氏が、昭和45年頃にこんなふうに書いています。
「日本人全体としては、昔は毎日、酒に親しむことはなかったのでして、祭とか行事の際に酒は飲むものであり、飲んだら必ず酔ったものです。大勢で、ときたま集まって飲む酒の席では、酔ってなくても酔ったふりをするのが行儀というものでした。昭和20年代までは、とことんまで飲んで泥酔して、道路で寝ている人を見かけることは珍しくありませんでした。
現在、日本酒の消費量は膨大なものとなり、毎日酒を飲む人は珍しくありません。ビールはかつてのお茶代わりの飲み物に使われたりします。日本人は酒を常用化した社会に突入したのです。それでいて泥酔する人を見ることは少なくなりました。日本社会全体が生酔いの境地を楽しんでいる、といえそうです」。(『食事の文化』より)
ちょうどこの頃、日本酒の消費量のピークでした。それ以前は、農耕神事や冠婚葬祭のハレの日、ときたま、へべれけになるまでいただく特別な存在だった日本酒が、都市化した社会の中で身近な存在となり、大衆飲料になったのです。日本酒に対する儀式性や民俗的価値はだんだん薄れていきました。
大衆化を後押ししたのが、日本酒の生産技術やベンダー技術の向上です。醸造試験所の研究や成分分析機の開発、醸造用機械の改良等によって飛躍的に向上し、これに伴って梱包・流通のシステムも進化して、さまざまなサイズの瓶や容器が開発され、家庭で買い置きできる商品が増えた。これが晩酌や独酌といった日本酒ならではの飲酒スタイルにつながりました。
しかしこれも日本酒がアルコール市場のトップランナーにいて、造り手や売り手に勢いがあった頃の話。時代は大きく変わりました。日本酒の消費が落ち込む今、造り手や売り手の一方的な経済論理や押し付けは通用しなくなり、儀式性や民俗的価値を見直す動きも出てきています。全国各地で進む“日本酒乾杯条例”の制定も、儀式性の復活といえるでしょう。
ふたたび、へべれけになるまで泥酔する時代に戻るなんてことは不可能ですが、今の価値観や生活規範に外れない範囲でスマートに酔うことは、日本酒が本来持つ優れた効能を活かす意味でも進めていいんじゃないかと思います。
酔いにまかせて大きな気持ちになって、しらふではいえない大口を叩く・・・少なくとも年末年始ぐらいは、大いに許そうじゃありませんか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、2013年1月からスタートした本コラム、連載期間は1年のお約束でしたが、おかげさまで継続できることになりました。これも訪問してくださる皆さまのお支えあってのこと。本当にありがとうございます。
2014年からは月1回の更新になりますが、引き続きよろしくお願いいたします。酒縁に乾杯!
(参考文献)
知って得する日本酒の健康効果(日本酒造組合中央会刊)
『酔い』のうつろい~酒屋と酒飲みの世相史/麻井宇介氏 (日本経済評論社刊)
酒席に役立つ読む肴~サラリーマン酒白書(酒文化研究所刊)
これまで、飲みすぎて失敗した話はゴマンと聞いてきましたが、大須賀会頭のこのお話は実に痛快でした。そう、酒には本当にいろいろな“効能”があるんです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
年末年始、何かと酒量が増える季節。新酒が出揃い、日本酒の世界も活況をみせます。造り手が丹精込めて醸した美酒。その実力をあますところなく堪能するには、まず我々飲み手の体調が万全であることが必須でしょう。
私の場合、宴席がある前の晩は、酒風呂に入って体調を整えます。少しぬるめの湯船にコップ2~3杯の日本酒を入れるだけ。血圧が安定し、湯冷めがしにくく、お肌もしっとり。ポカポカ気分で布団に入れます。本当は毎晩やりたいけど、適度に余り酒があるときだけのゼイタクです。
「今日は量を飲むな」と判っている日は、お昼や午後のデザートで乳製品を採るなどして胃に保護粘膜をつくっておきます。
きき酒を目的とした宴席では食事はほとんど採らず、続けざまに何種類も試飲します。でもこれは酒を試すときの飲み方であり、酒を楽しむときにはNGですね。
アルコールは十二指腸と小腸で吸収され、血液の流れに乗って全身に回る。そうして少しずつ血中アルコール濃度が高まり、“酔い”を自覚します。
しかし、飲むピッチが早くなったり量がかさむと、アルコールの吸収→巡回→酔いの自覚までのタイムラグが無視され、酔いを自覚する前に、知らず知らずに適量をオーバーし、結果的に悪酔いに陥ってしまいます。これを防ぐ意味でも、何かを食べながら飲む、ということが大事。アルコールは食べ物と一緒に胃にしばらく留まるので、吸収がゆるやかになるようです。
よく、日本人の一日あたりの適量は、日本酒なら2合まで、ビールなら大瓶2本まで、ワインならグラス2杯まで、焼酎やウイスキーの水割りなら3杯まで。これを1時間ぐらいかけて飲むのがベターと言われます。私もですが、本コラムの読者諸氏も、「この程度の量じゃおさまらない」と苦笑いしていることでしょう。ならばこそ、いろいろな食事をバラエティよく揃え、会話で盛り上げるなどして、出来る限り、アルコールの吸収速度をゆったり長持ちさせる工夫が必要なんですね。
ちなみに、辻クッキングスクールの味田節子先生によると「メタボ改善や健康長寿のためには、“三低晩酌”がおススメ」とのこと。三低とは、ずばり【低糖・低塩・低カロリー】。日本酒は1合で180キロカロリー・糖分9グラムですから、この分を差し引いて晩酌メニューを考えればよいわけです。
外飲みのときは、朝や昼の食事でバランスをとるようにします。私自身、太りやすい体質なので、ダイエット中はかなり神経質になっちゃいますが、いちいち気にしてストレスを抱えるよりも、大雑把に、「ちょっとお昼軽くしとこう」「翌朝軽めにしよ」と考えるようにしています。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日本酒の健康と効能については、秋田大学の滝澤行雄名誉教授の研究が知られています。おさらいしてみますと、
◆発ガン抑制
日本酒=肝臓によくないというイメージをもたれますが、実は、日本酒の消費量の多い東日本のほうが、西日本に比べて肝硬変や肝がんによる死亡率が低い。さらに日本酒の成分で膀胱がん、前立腺がん、子宮頸がんのがん細胞増殖抑制効果が認められた。日本酒にはアルコールのほか、有機酸、糖分、アミノ酸、ビタミン類など100種以上の微量成分が含まれ、これらががん細胞の萎縮や壊死を示す効果があると判明しています。
国立がん研究所の平山雄氏(故人)の研究により、毎日適量を飲酒する人は、まったく飲まない人に比べ、発ガンリスクが低いことも判明しています。おかずと一緒にいただく“晩酌”が健康効果と結びつき、大脳皮質を刺激してストレスを解消し、心の緊張をほぐすことも奏功しているのでしょう。
◆抗酸化作用
日本酒には悪玉コレステロールの酸化を防ぐ抗酸化作用があります。悪玉コレステロールは、酸化することで動脈硬化や心筋梗塞を引き起こすため、酸化を防ぐ効果が大事なんですね。
◆美肌効果
最近、大手化粧品メーカーでも“杜氏の手が白い”ことに着目し、麹酸を使った美白・保湿商品を大々的に宣伝していますが、日本酒の美肌効果は、昔から芸妓さんが日本酒を化粧水やパック代わりに使っていたことでも知られています。
私は酒風呂に入ったとき、風呂桶にお湯+純米酒コップ2分の1を溜めて洗顔マッサージをし、布巾を浸して即席パックをします。純米酒の無駄遣いと思われるかもしれませんが、化粧品代より安上がりだし(笑)、何より、口に入れるものだから安心安全です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
民俗学者の石毛直道氏が、昭和45年頃にこんなふうに書いています。
「日本人全体としては、昔は毎日、酒に親しむことはなかったのでして、祭とか行事の際に酒は飲むものであり、飲んだら必ず酔ったものです。大勢で、ときたま集まって飲む酒の席では、酔ってなくても酔ったふりをするのが行儀というものでした。昭和20年代までは、とことんまで飲んで泥酔して、道路で寝ている人を見かけることは珍しくありませんでした。
現在、日本酒の消費量は膨大なものとなり、毎日酒を飲む人は珍しくありません。ビールはかつてのお茶代わりの飲み物に使われたりします。日本人は酒を常用化した社会に突入したのです。それでいて泥酔する人を見ることは少なくなりました。日本社会全体が生酔いの境地を楽しんでいる、といえそうです」。(『食事の文化』より)
ちょうどこの頃、日本酒の消費量のピークでした。それ以前は、農耕神事や冠婚葬祭のハレの日、ときたま、へべれけになるまでいただく特別な存在だった日本酒が、都市化した社会の中で身近な存在となり、大衆飲料になったのです。日本酒に対する儀式性や民俗的価値はだんだん薄れていきました。
大衆化を後押ししたのが、日本酒の生産技術やベンダー技術の向上です。醸造試験所の研究や成分分析機の開発、醸造用機械の改良等によって飛躍的に向上し、これに伴って梱包・流通のシステムも進化して、さまざまなサイズの瓶や容器が開発され、家庭で買い置きできる商品が増えた。これが晩酌や独酌といった日本酒ならではの飲酒スタイルにつながりました。
しかしこれも日本酒がアルコール市場のトップランナーにいて、造り手や売り手に勢いがあった頃の話。時代は大きく変わりました。日本酒の消費が落ち込む今、造り手や売り手の一方的な経済論理や押し付けは通用しなくなり、儀式性や民俗的価値を見直す動きも出てきています。全国各地で進む“日本酒乾杯条例”の制定も、儀式性の復活といえるでしょう。
ふたたび、へべれけになるまで泥酔する時代に戻るなんてことは不可能ですが、今の価値観や生活規範に外れない範囲でスマートに酔うことは、日本酒が本来持つ優れた効能を活かす意味でも進めていいんじゃないかと思います。
酔いにまかせて大きな気持ちになって、しらふではいえない大口を叩く・・・少なくとも年末年始ぐらいは、大いに許そうじゃありませんか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、2013年1月からスタートした本コラム、連載期間は1年のお約束でしたが、おかげさまで継続できることになりました。これも訪問してくださる皆さまのお支えあってのこと。本当にありがとうございます。
2014年からは月1回の更新になりますが、引き続きよろしくお願いいたします。酒縁に乾杯!
(参考文献)
知って得する日本酒の健康効果(日本酒造組合中央会刊)
『酔い』のうつろい~酒屋と酒飲みの世相史/麻井宇介氏 (日本経済評論社刊)
酒席に役立つ読む肴~サラリーマン酒白書(酒文化研究所刊)
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2013年12月13日
第22回 茶懐石と酒
和食が世界無形文化遺産に登録されました。喜ばしいことではありますが、少々ひっかかるところもあり、“遺産”という言葉を広辞苑を引いてみたら、「前代の人が遺した業績」とありました。歴史があるということは尊いけれど、現代ではなく前代の遺物扱いかと思うと、なんとなく哀しくなります。
折も折、今月に入り、式年遷宮を迎えた伊勢神宮の早朝参りと、濃茶を中心とした茶懐石のフルコースを味わうという2つの文化遺産体験をしました。日本酒の話題とは少しズレるかもしれませんが、とても意義深い体験でしたので、そのお話をさせていただきます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
伊勢神宮は、それこそ世界文化遺産の認定資格は十分なのに、登録はされていません。人間が神様を遺産認定するなど畏れ多いという理由で、立候補すらしないのです。恒久的な建物を造らず、20年ごとに同じものを造り替えて、日本古来の伝統や精神を次世代に継承していく、まさに現在進行形の文化。これぞ日本独自の思想が反映された世界に誇るべきものだと、実際にお参りし、しみじみ思い知りました。
食物・穀物の神である豊受大神宮(外宮)をお参りしたとき、ガイドさんから教えてもらってビックリしたのは、神様のお食事=御饌(みけ)。米、塩、水、神酒、餅、魚、鳥、海藻、野菜、菓子、果物などを朝夕2回、365日、一日も休まず神殿にお供えするのですが、調理するのに、古代さながら、前夜から潔斎=身を清めた神職が、木と火打石で火を熾しているということ。食材のみならず、器も、毎食、新しく焼いた素焼きの器を使う。これを、今日まで1500余年、途切れることなく毎日続けているというのです。神道においては、何よりも清浄を尊ぶのですね。
日本人に生まれてこのかた、当たり前のように正月や種々の行事でお参りしてきた神社のこと、何も知らなかったんだなあと恥ずかしくなりました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2年前から経営者団体の有志で、ビジネスマナーや経営哲学を学ぶ目的で茶道をたしなんでいます。私はこの年齢になって生まれて初めて、まともにお茶の勉強を始め、和室に入るときの襖の開け方やら畳の踏み方やらお辞儀の仕方やら、日本人として知って当然の所作やマナーをまるで知らずに生きてきたことを、大いに恥じているところ。ちょうど伊勢神宮をお参りした1週間後、茶道仲間にしずおか地酒研究会メンバーを加え、御所丸(静岡市葵区大鋸町)で茶懐石のフルコースを体験する会を催しました。御所丸さんは本格的な茶懐石を、テーブル席で気軽に体験できるお店で、酒は初亀(岡部町)を扱っています。
◆茶懐石と喫茶の店「御所丸」 http://gosyomaru.sakura.ne.jp/
一般的な和食の会席料理とは違い、茶懐石の料理や酒は、お茶(濃茶)をいただく前の大いなる“前フリ”。主役のお茶が登場するまで、実に3~4時間かけ、亭主(ホスト)は前フリ(懐石料理と酒)で客(ゲスト)をもてなすのです。これらをトータルで「茶事」といいます。
懐石とは禅僧が修行中、寒さと空腹を癒すため、温石を懐に入れていたことに由来し、禅僧が喫食する精進料理を懐石料理と呼んでいました。16世紀、千利休が禅宗の精神を本膳料理に取り入れ、茶道の会合に供する「茶懐石」を確立した、といわれます。

茶懐石のメインディッシュ、煮物椀
茶懐石の手順は―
(1)一汁三菜(飯、汁、向付け、煮物、焼物)が基本で、まず、「飯」、「汁」、「向付け」が折敷でだされる。
(2)ご飯を二口~三口食べ、味噌汁を飲んだところで、それを合図に亭主から酒が勧められる。基本は杯に一杯ずつ。
(3)酒を飲んでから、「向付」に手をつける。向付とは、膳の手前ではなく向こう側に置かれた刺身類のこと。
(4)さらに、「煮物」、人数分が一鉢に盛り込まれた「焼物」が出される。
「鉢肴(はちざかな)」、「強肴(しいざかな)」など献立以外の料理を出す場合もある。
「小吸物」、「八寸」が出される。
(5)献酬のあと「湯桶(ゆとう )」と香の物がでて食べ終わる。
(6)懐紙で膳に落ちた滴を押さえて折敷の上を整え、一同で折敷の縁に掛けてあった箸を折敷の中に落とし、終了の合図をして終える。
(7)小休止の後、菓子と濃茶が供せられる。
一般の宴会料理と大きく違うのは、初めからご飯と汁が出てきて、その合間に酒が注がれるということ。この、合間の匙加減というのが難しいんですね。
茶懐石で表現する“おもてなしの精神”とは、単に美味しい酒や料理を出せばいいというものではなく、厨房から膳を持って給仕口の襖を閉め、ふたたび襖を開ける間の呼吸までも細心の神経を遣うということ。間が早すぎても、空きすぎてもダメ。そして料理は季節感、食材の持ち味を大切にし、切れ端まで粗末に扱わず、温かい料理は温かく、冷たいものは器も冷たくして供する。献立も、海、山、里の幸をバランスよく組み合わせ、食べにくいもの・噛む音が出るものは隠し包丁を入れ、骨あるものは丁寧に取り除く。・・・今の宴会料理が忘れつつあるもてなしの王道が、そこにあるようです。
今回、いただいた懐石料理をザッと紹介すると―
お香煎/京都祇園・原了郭製
麦や米を炒って粉末にした〈こがし〉に山椒、紫蘇、陳皮(ちんぴ=ミカンの皮)などの粉末と少量の塩を加えたもの。湯を注いで茶のように飲む、いわばウエルカムドリンク。ちなみに原了郭は赤穂浪士・原惣右衛門のご子孫とか!
お膳/一汁三菜
ご飯は一文字に盛る。お替り自由。
汁はヨモギ麩・菱の実・祖父江銀杏。
向付は鯛昆布〆・寿海苔・莫大海(バクダイの実)・双葉
煮物椀(メインディッシュ)は麻機レンコン団子・椎茸・人参・大根・三つ葉・柚子
焼き物は鰤の幽庵焼 梅酢漬け・生姜

最初に出される飯、汁、向付
和え物/菊菜・菠薐草(ほうれん草)・阿房宮(食用菊)・木の子
強肴/強いるので強肴といわれ 酒が進むような肴を少量出す。粟麩田楽・人参寒天寄。
預鉢/ご飯のおかずとして出される炊き合わせや酢の物など。凍豆腐・近江こんにゃく・生湯葉・百合根。

預鉢の凍豆腐は地酒にピッタリ!
小吸物/今回は師走にちなみ、鰊(にしん)を巻いた更科蕎麦寿司。
八寸/八寸(約20cm角)の正方形の盆のこと。魚介類のなまぐさものと野菜を盛り合わせたり、山海の珍味を数種取り合わせたもの。大徳寺麩・岩梨添え・鮭燻製醍醐(チーズ)巻ケッパー添え
湯桶/注ぎ口と横手がついた湯次(ゆつぎ)から、重湯に塩味をきかせた汁をごはんにかけ、香の物と一緒にいただく。
甘味/煮梅箔散らし・麩饅頭
干菓子/源氏香・巻柿・金平糖
濃茶/「祖母昔」 上林春松製
薄茶/「松風昔」 同

酒は、上記にあるように、最初にご飯に口をつけ、味噌汁を飲んだところで亭主が「燗鍋」に入れて勧めます。
燗鍋というのは鉄製のお銚子。昔はこのまま火にかけてお燗していたんですね。今回は御所丸さんに事前にお許しをいただき、特別に初亀新酒荒しぼり、亀丸純米吟醸(秋上がり)、白隠正宗純米酒誉富士を持ち込み、燗鍋に入れて冷やでお出ししました。

昔はそのまま火にかけて燗付けした鉄製の「燗鍋」
初亀はもともと御所丸の取り扱い酒。白隠正宗は禅宗の中興の祖・白隠禅師ゆかりの酒ということでご用意しました。地酒研会員が居酒屋感覚で酒瓶からそのまま注ぐマナー違反(苦笑)をしたせいか、3種類の酒すべて空瓶になり、日頃は日本酒が苦手という茶道研究会会員もスイスイ味わってくれました。季節の食材を吟味し、手間隙をかけ、丁寧に調理された料理との食べ合わせ・飲み合わせの賜物だと思います。

茶懐石に用意した地酒と、茶懐石に使う酒杯
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気がつけば、湯桶が出るまで約3時間、あっという間でした。そして、これらの茶事の真の主役が、この後出される一杯の茶だということにただただ驚くばかり。一杯の茶のために費やす、この膨大な準備時間と気配りは、「おもてなし」のひと言では到底足りません。
ふだん、なかなか濃茶を味わう機会はないと思いますが、濃茶というのは練り状のようなドロッとした濃~い抹茶。飲むというより吸う感じ。これを、一つの茶碗を回しのみしていただきます。千利休が始めた作法のようで、戦国時代、狭い茶室で同じ茶碗を回しのみするというのは、真に気を許し合った証拠なのでしょう。「一味同心」とか「同じ釜の飯を食う」なんて言葉を想起させます。
味はご想像のとおり、ものすごく苦いのですが、より上質の抹茶を厳選し、品よくまろやかに仕上げるのが亭主の腕の見せどころのようです。初めて濃茶を飲んだときは、酒蔵で、酒母のもろみをきき酒したときを思い出しちゃいました(苦笑)。
濃茶のあとは、ふだんいただく抹茶として馴染みのある「薄茶」をいただき、フィニッシュです。濃茶よりも“薄い”からといって軽視してはいけません。一期一会の茶席の最後の大切な一杯。この日も、最後の薄茶の美味しさが、余韻と感動を残してくれました。
カラになった酒瓶を眺め、御所丸の店主が「お酒を飲んだ後、濃茶や薄茶をいただけば、絶対に二日酔いしませんよ」とひと言。そういえば、しずおか地酒研究会で利用する飲食店では、焼津の日本料理「安藤」が、コース料理の最後に必ず抹茶(薄茶)を出してくれます。安藤さんは茶事の心得がおありなのだ・・・と今更ながら感じ入りました。
◆日本料理 安藤 http://www.at-s.com/gourmet/featured/jizake/vol13.html
伊勢神宮の御饌(みけ)と、千利休の茶懐石。詳しく調べたわけではありませんが、この2つには和食の原型がある、と実感しました。
この両者に日本酒が介在していることも嬉しい発見です。焼酎やワインってわけにはいきませんよね、さすがに。
ただ、私のお茶の先生曰く「濃茶の回しのみは、利休が生きていた頃、日本に入ってきたキリスト教のぶどう酒の回しのみが影響しているのではないか」とも。茶道と酒道は思った以上に近しいのかもしれません。
いずれにせよ、和食に“遺産”という称号がふさわしいのかどうか、この先、日本酒も“遺産”扱いされてしまうのだろうか、ふだんの飲食を見直しながらちゃんと考えていきたい、と思っています。
折も折、今月に入り、式年遷宮を迎えた伊勢神宮の早朝参りと、濃茶を中心とした茶懐石のフルコースを味わうという2つの文化遺産体験をしました。日本酒の話題とは少しズレるかもしれませんが、とても意義深い体験でしたので、そのお話をさせていただきます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
伊勢神宮は、それこそ世界文化遺産の認定資格は十分なのに、登録はされていません。人間が神様を遺産認定するなど畏れ多いという理由で、立候補すらしないのです。恒久的な建物を造らず、20年ごとに同じものを造り替えて、日本古来の伝統や精神を次世代に継承していく、まさに現在進行形の文化。これぞ日本独自の思想が反映された世界に誇るべきものだと、実際にお参りし、しみじみ思い知りました。
食物・穀物の神である豊受大神宮(外宮)をお参りしたとき、ガイドさんから教えてもらってビックリしたのは、神様のお食事=御饌(みけ)。米、塩、水、神酒、餅、魚、鳥、海藻、野菜、菓子、果物などを朝夕2回、365日、一日も休まず神殿にお供えするのですが、調理するのに、古代さながら、前夜から潔斎=身を清めた神職が、木と火打石で火を熾しているということ。食材のみならず、器も、毎食、新しく焼いた素焼きの器を使う。これを、今日まで1500余年、途切れることなく毎日続けているというのです。神道においては、何よりも清浄を尊ぶのですね。
日本人に生まれてこのかた、当たり前のように正月や種々の行事でお参りしてきた神社のこと、何も知らなかったんだなあと恥ずかしくなりました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2年前から経営者団体の有志で、ビジネスマナーや経営哲学を学ぶ目的で茶道をたしなんでいます。私はこの年齢になって生まれて初めて、まともにお茶の勉強を始め、和室に入るときの襖の開け方やら畳の踏み方やらお辞儀の仕方やら、日本人として知って当然の所作やマナーをまるで知らずに生きてきたことを、大いに恥じているところ。ちょうど伊勢神宮をお参りした1週間後、茶道仲間にしずおか地酒研究会メンバーを加え、御所丸(静岡市葵区大鋸町)で茶懐石のフルコースを体験する会を催しました。御所丸さんは本格的な茶懐石を、テーブル席で気軽に体験できるお店で、酒は初亀(岡部町)を扱っています。
◆茶懐石と喫茶の店「御所丸」 http://gosyomaru.sakura.ne.jp/
一般的な和食の会席料理とは違い、茶懐石の料理や酒は、お茶(濃茶)をいただく前の大いなる“前フリ”。主役のお茶が登場するまで、実に3~4時間かけ、亭主(ホスト)は前フリ(懐石料理と酒)で客(ゲスト)をもてなすのです。これらをトータルで「茶事」といいます。
懐石とは禅僧が修行中、寒さと空腹を癒すため、温石を懐に入れていたことに由来し、禅僧が喫食する精進料理を懐石料理と呼んでいました。16世紀、千利休が禅宗の精神を本膳料理に取り入れ、茶道の会合に供する「茶懐石」を確立した、といわれます。
茶懐石のメインディッシュ、煮物椀
茶懐石の手順は―
(1)一汁三菜(飯、汁、向付け、煮物、焼物)が基本で、まず、「飯」、「汁」、「向付け」が折敷でだされる。
(2)ご飯を二口~三口食べ、味噌汁を飲んだところで、それを合図に亭主から酒が勧められる。基本は杯に一杯ずつ。
(3)酒を飲んでから、「向付」に手をつける。向付とは、膳の手前ではなく向こう側に置かれた刺身類のこと。
(4)さらに、「煮物」、人数分が一鉢に盛り込まれた「焼物」が出される。
「鉢肴(はちざかな)」、「強肴(しいざかな)」など献立以外の料理を出す場合もある。
「小吸物」、「八寸」が出される。
(5)献酬のあと「湯桶(ゆとう )」と香の物がでて食べ終わる。
(6)懐紙で膳に落ちた滴を押さえて折敷の上を整え、一同で折敷の縁に掛けてあった箸を折敷の中に落とし、終了の合図をして終える。
(7)小休止の後、菓子と濃茶が供せられる。
一般の宴会料理と大きく違うのは、初めからご飯と汁が出てきて、その合間に酒が注がれるということ。この、合間の匙加減というのが難しいんですね。
茶懐石で表現する“おもてなしの精神”とは、単に美味しい酒や料理を出せばいいというものではなく、厨房から膳を持って給仕口の襖を閉め、ふたたび襖を開ける間の呼吸までも細心の神経を遣うということ。間が早すぎても、空きすぎてもダメ。そして料理は季節感、食材の持ち味を大切にし、切れ端まで粗末に扱わず、温かい料理は温かく、冷たいものは器も冷たくして供する。献立も、海、山、里の幸をバランスよく組み合わせ、食べにくいもの・噛む音が出るものは隠し包丁を入れ、骨あるものは丁寧に取り除く。・・・今の宴会料理が忘れつつあるもてなしの王道が、そこにあるようです。
今回、いただいた懐石料理をザッと紹介すると―
お香煎/京都祇園・原了郭製
麦や米を炒って粉末にした〈こがし〉に山椒、紫蘇、陳皮(ちんぴ=ミカンの皮)などの粉末と少量の塩を加えたもの。湯を注いで茶のように飲む、いわばウエルカムドリンク。ちなみに原了郭は赤穂浪士・原惣右衛門のご子孫とか!
お膳/一汁三菜
ご飯は一文字に盛る。お替り自由。
汁はヨモギ麩・菱の実・祖父江銀杏。
向付は鯛昆布〆・寿海苔・莫大海(バクダイの実)・双葉
煮物椀(メインディッシュ)は麻機レンコン団子・椎茸・人参・大根・三つ葉・柚子
焼き物は鰤の幽庵焼 梅酢漬け・生姜
最初に出される飯、汁、向付
和え物/菊菜・菠薐草(ほうれん草)・阿房宮(食用菊)・木の子
強肴/強いるので強肴といわれ 酒が進むような肴を少量出す。粟麩田楽・人参寒天寄。
預鉢/ご飯のおかずとして出される炊き合わせや酢の物など。凍豆腐・近江こんにゃく・生湯葉・百合根。
預鉢の凍豆腐は地酒にピッタリ!
小吸物/今回は師走にちなみ、鰊(にしん)を巻いた更科蕎麦寿司。
八寸/八寸(約20cm角)の正方形の盆のこと。魚介類のなまぐさものと野菜を盛り合わせたり、山海の珍味を数種取り合わせたもの。大徳寺麩・岩梨添え・鮭燻製醍醐(チーズ)巻ケッパー添え
湯桶/注ぎ口と横手がついた湯次(ゆつぎ)から、重湯に塩味をきかせた汁をごはんにかけ、香の物と一緒にいただく。
甘味/煮梅箔散らし・麩饅頭
干菓子/源氏香・巻柿・金平糖
濃茶/「祖母昔」 上林春松製
薄茶/「松風昔」 同
酒は、上記にあるように、最初にご飯に口をつけ、味噌汁を飲んだところで亭主が「燗鍋」に入れて勧めます。
燗鍋というのは鉄製のお銚子。昔はこのまま火にかけてお燗していたんですね。今回は御所丸さんに事前にお許しをいただき、特別に初亀新酒荒しぼり、亀丸純米吟醸(秋上がり)、白隠正宗純米酒誉富士を持ち込み、燗鍋に入れて冷やでお出ししました。

昔はそのまま火にかけて燗付けした鉄製の「燗鍋」
初亀はもともと御所丸の取り扱い酒。白隠正宗は禅宗の中興の祖・白隠禅師ゆかりの酒ということでご用意しました。地酒研会員が居酒屋感覚で酒瓶からそのまま注ぐマナー違反(苦笑)をしたせいか、3種類の酒すべて空瓶になり、日頃は日本酒が苦手という茶道研究会会員もスイスイ味わってくれました。季節の食材を吟味し、手間隙をかけ、丁寧に調理された料理との食べ合わせ・飲み合わせの賜物だと思います。

茶懐石に用意した地酒と、茶懐石に使う酒杯
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気がつけば、湯桶が出るまで約3時間、あっという間でした。そして、これらの茶事の真の主役が、この後出される一杯の茶だということにただただ驚くばかり。一杯の茶のために費やす、この膨大な準備時間と気配りは、「おもてなし」のひと言では到底足りません。
ふだん、なかなか濃茶を味わう機会はないと思いますが、濃茶というのは練り状のようなドロッとした濃~い抹茶。飲むというより吸う感じ。これを、一つの茶碗を回しのみしていただきます。千利休が始めた作法のようで、戦国時代、狭い茶室で同じ茶碗を回しのみするというのは、真に気を許し合った証拠なのでしょう。「一味同心」とか「同じ釜の飯を食う」なんて言葉を想起させます。
味はご想像のとおり、ものすごく苦いのですが、より上質の抹茶を厳選し、品よくまろやかに仕上げるのが亭主の腕の見せどころのようです。初めて濃茶を飲んだときは、酒蔵で、酒母のもろみをきき酒したときを思い出しちゃいました(苦笑)。
濃茶のあとは、ふだんいただく抹茶として馴染みのある「薄茶」をいただき、フィニッシュです。濃茶よりも“薄い”からといって軽視してはいけません。一期一会の茶席の最後の大切な一杯。この日も、最後の薄茶の美味しさが、余韻と感動を残してくれました。
カラになった酒瓶を眺め、御所丸の店主が「お酒を飲んだ後、濃茶や薄茶をいただけば、絶対に二日酔いしませんよ」とひと言。そういえば、しずおか地酒研究会で利用する飲食店では、焼津の日本料理「安藤」が、コース料理の最後に必ず抹茶(薄茶)を出してくれます。安藤さんは茶事の心得がおありなのだ・・・と今更ながら感じ入りました。
◆日本料理 安藤 http://www.at-s.com/gourmet/featured/jizake/vol13.html
伊勢神宮の御饌(みけ)と、千利休の茶懐石。詳しく調べたわけではありませんが、この2つには和食の原型がある、と実感しました。
この両者に日本酒が介在していることも嬉しい発見です。焼酎やワインってわけにはいきませんよね、さすがに。
ただ、私のお茶の先生曰く「濃茶の回しのみは、利休が生きていた頃、日本に入ってきたキリスト教のぶどう酒の回しのみが影響しているのではないか」とも。茶道と酒道は思った以上に近しいのかもしれません。
いずれにせよ、和食に“遺産”という称号がふさわしいのかどうか、この先、日本酒も“遺産”扱いされてしまうのだろうか、ふだんの飲食を見直しながらちゃんと考えていきたい、と思っています。
Posted by 日刊いーしず at 12:00