2014年09月12日
第29回 静岡県地酒まつりの対話
2013年10月1日の静岡県地酒まつり(ホテルセンチュリー静岡)
毎年10月1日(日本酒の日)には、静岡酒ファンが待ちに待った【静岡県地酒まつり(県酒造組合主催)】が開かれます。例年、会場は県東部・中部・西部と持ち回りで移動し、今年は西部、JR浜松駅に隣接したオークラアクトシティホテル浜松で18時からの開宴。組合加盟の蔵元の大半が参加しますので、いろんな銘柄を一度に飲み比べできる貴重なチャンスです。2500円という料金もお手頃。チケットはeプラスで購入できますのでふるってご参加ください。
◆詳しくは県酒造組合のこちらのページを。
http://www.shizuoka-sake.jp/topics/zizakematsuri2014_s.html
静岡県酒造組合が10月1日に開催する静岡県地酒まつりは昭和62年(1987)に始まりました。私が取材先の店で偶然、静岡酒に出会い、それまで抱いていた日本酒のイメージをくつがえされたのが、まさにこの年の夏でした。
絵に描いたようなグッドタイミングだったにもかかわらず、残念ながら静岡市で開かれた記念すべき第1回の地酒まつり(駅コンコースでの物産展的な試飲会だったそう)は逃してしまい、第2回(浜松)、第3回(富士)はタイミングが合わず、初めて参加したのは平成2年(1990)の第4回。当時の静岡ターミナルホテル(現・ホテルアソシア静岡)の一番広い「駿府の間」での開催でした。ホテルの大宴会場での試飲会というのも初めてだったので、緊張の面持ちで各ブースを回ったことを覚えています。
今でも忘れられないのは、とにかく女性が少なく、いたとしても夫婦で参加した業界関係者や料亭の女将さんという感じの人がほとんど。大半を占めた男性も背広を来た人ばかりで、会場全体が“黒かった”ということでした。
乾杯の発声の後、参加者のほとんどは料理バイキングに殺到し、主役の蔵元ブースに集まるのは酒販店の営業マンとおぼしき人々。業界の肩書きを持たない小娘が一人、彼らをおしのけて試飲して回るのは、異様な光景に見えたかもしれませんが(苦笑)、「きき酒を勉強に来たんだ!」と自分を奮い立たせ、終始緊張しながら試飲したと記憶しています。
草創期の地酒まつりが“業界関係者の情報交換の場”という性格だったことは致し方ないとして、回が進むにつれ、純粋な地酒ファンが増えてきて、モノトーンに思えた会場は次第に色華やかになっていきました。組合のほうも女性や若者など新しい客層を広げようと、途中から酒も料理もゆったり楽しめる着席スタイルにしたり、初心者が気軽に参加できるように低価格&立食スタイルに変えたりと試行錯誤を重ねてきました。情報発信の対象は、売り手から飲み手へとあきらかに広がったわけです。
業界の肩書きを持たない小娘だった私もすっかり図太くなって(笑)、運営サポーターとしてチケット販売等に協力させていただいたり、試飲のお手伝いをしたことも。燗酒ブースでの楽しい思い出については、第8回「美酒の記憶」(こちら)をぜひご覧ください。
1998年からは【静岡県地酒まつりIN東京】がスタートしました。ここ数年、9月第一日曜日開催で定着し、今年も9月7日に一ツ橋如水会館に600人が集まり、大盛況だったようです。

2007年、東京国際フォーラムに1300人集めた静岡県地酒まつりIN東京10周年
98年10月19日に開かれた第1回目は、恵比寿のウエスティンホテル東京の小宴会場でのこじんまりした試飲会でした。このとき参加したのは静岡県酒造組合静酉会(若手経営者の会)の会員12醸(高砂、富士錦、正雪、初亀、磯自慢、杉錦、士魂、喜久醉、開運、千寿、出世城、花の舞)。静岡県東京事務所が県産品振興策の一環として呼びかけて急きょ実現したもので、告知期間はひと月足らず、平日の午後という時間帯でしたが、首都圏の静岡酒ファンや酒販業者約100人が来場し、秋本番、旨味の増した名酒の数々を堪能しました。私はこのとき、発行間もない静岡新聞社刊『地酒をもう一杯』の展示即売ブースを設けていただき、編集者の平野斗紀子さんと一緒に参加しました。
プロの商売人や評論家はそれなりに厳しく吟味していたようですが、会社を休んでまで来たという一般消費者の中には、「新潟の酒はただ飲みやすいが、静岡の酒は飲みやすくて旨味もある」「こんなにレベルの高い酒を一度に味わえるなんて幸せ」という人や、「本当にいい酒が判る奴なら静岡の酒は見逃さない」と“自画自賛”する人も。12醸というコンパクトな数が功を奏したのか、当時、まだ首都圏ではなじみの薄かった県内銘柄にも分け隔てなく人が集まり、あちこちで対話の輪が広がっていました。
東京は単に市場が大きいということだけでなく、情報過多の波をくぐり抜けて明確な自己基準を持つ売り手・飲み手がいて、眼(舌)の肥えた彼らの声は造り手に刺激を与えます。「対話」の中から造り手が得るものは大きい、としみじみ実感しました。
第2回、第3回はウエスティンホテル東京の大宴会場で200人規模の着席パーティーとなり、作家の村松友視さん等、静岡県ゆかりの著名人も来賓として参加されました。
4回目以降は、全国の酒造関係者がよく使うという一ツ橋如水会館で400~500人の立食パーティーとなり、10回記念の2007年には東京国際フォーラムに1300人が集まりました。単県が首都圏で主催する地酒イベントとしては、おそらく最大級の規模だったでしょう。会場のあちこちで「静岡県はすごい」と感嘆の声を聞きました。08年にふたたび如水会館に戻った時は、前年の影響で参加者が一段と増え、スシ詰め状態。翌年から品川プリンスホテル大宴会場に移し、ここ数年は如水会館に戻っているようです。
私は2回目以降、マスコミ招待者リストを提供したり、当日は司会進行役で現場をサポートするなど毎回参加し、造り手と飲み手の対話が年々深まっていく様子を見続けてきました。

静岡では着席スタイルだった2007年
県内での静岡県地酒まつりが着席から立食に切り替わった年、会場内で少なからずトラブルが生じ、その年の実行委員会に対して不信感を持ち、後日、事の顛末を個人ブログでぶちまけてしまいました。真摯に受け止めてくれた蔵元もいましたが、組合理事会の反感を買い、その後の取材活動や映像制作にも少なからず影響を落とすことに・・・。ブログでぶちまける前に相手側ときちんと対話すべきでした。
一方的にカーッとなって書きなぐったブログは、今思い返すと実に大人げなく、ネット記事の影響力にも配慮を欠くもの。ただただ猛省するばかりです。初めて地酒まつりに参加したとき、慣れない宴会場を一人、「勉強しよう」と緊張しながら回った初心の自分を思い出しながら、今年の10月1日は、造り手や飲み手のみなさんと心して対話したいと思っています。
初めて参加する人にとって、地酒まつりのような呑み放題のイベントでは雰囲気に流されてしまい、ついつい飲み過ぎてしまうかもしれません。静岡の酒は飲み口がきれいですから、なおさら“用心”が必要です。ペットボトルのミネラルウォーターを携帯するなどして、摂取した酒量の2倍の水を摂るようおすすめします。
きき酒に特別な作法などはありませんが、たとえば今まで飲んだことのない銘柄から飲んでみるとか、蔵元にイチオシを訊いて飲むとか、何か一つ、自分なりのルールを決めて回ることをおすすめします。
そして何より、おしゃべりを楽しむこと。私は仕事柄、いろいろな農産品・加工食品・飲料品等の展示会に行きますが、一般消費者向けの展示会で、同地域の同一業界の競合他社同士がほとんど顔をそろえるという会はめったにありません。この機を逃さず、参加した全ての蔵元の声をしっかりキャッチしてみてください。
酒を造っている人を知ると、自分の好みの酒(=蔵元)が自然に解ってきます。好みの酒、思い入れが持てる酒が1つでも2つでも見つかれば、ふだんのノミニケーションもきっと充実してくるはずです。平日夜の浜松開催ということで都合がつかない人もいらっしゃるかもしれませんが、参加予定の方は鈴木を見かけたら遠慮なくお声かけくださいね!
Posted by 日刊いーしず at 12:00